君は僕に気づかず、隣を通りすぎる【銀時】
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俺にはすごく、すごく好きな女の子がいる。名前は知らない。でも、笑顔がとても輝いている子だ。その子との出会いは何てことない、ただいつものようにジャンプを買いに行く途中で彼女がチンピラに絡まれていたので、ちょっと手を貸してやっただけ。その時俺はヘルメットを被っている上にゴーグルまでつけていたから、きっと彼女は俺の顔を知らない。それでも彼女の輝く笑顔は一瞬で俺の心に広がっていった。
あの子は万事屋の近くをよく通りかかる。特段探しているわけでもないのに、窓から外を眺めていると目が勝手に見つけ出してしまうのだ。あ、今日もいた。いつものように彼女を見つけ出した自分が可笑しくて、手で顔を覆って小さく笑った。どんだけ気になってんだよ、声かけてみればいいじゃん。そんな思いも浮かんでくるが、それを実際に行動には移せない。せいぜい彼女が通りそうな気がする時に外に出て、本当に歩いていたら隣を通りすがってみるのが精一杯だ。俺っていつからこんなにヘタレになったの?
「あ、万事屋の旦那ァ」
今日こそは、と意気込んで彼女が通りそうな時間帯を見計らって外に出ると、大方サボり中なのであろう沖田に出会った。コイツを前にして自然に彼女と通りすがるなんて俺にゃあ出来ねェ。今日は諦めるかとため息混じりに家に戻ろうとすると、俺の視線が彼女の姿をバッチリ捉えた。遠くの方からこっちに向かって歩いてきている。
「あ…」
思わず漏れた声に自分でも焦り沖田を見ると、奴も俺の視線を辿って彼女を視界に捉えたようだった。
「なんだ、ナマエさんじゃねーですかィ。知り合いなんですかィ、旦那ァ?」
「…ナマエ、」
初めて知った彼女の名前を忘れないようにゆっくりと復唱し、ニヤけそうになる気持ちを必死に抑えて平静を保とうとした。が、次の言葉に俺の表情は一瞬で凍り付いた。
「土方のヤローの彼女さんでさァ。全く、どこがいいんですかねェあんな男の…」
土方の彼女?誰が?まさか、あの子が…
俺の頭はそれ以上の考察を拒否した。認めたくない、納得したくない。そんな思いが頭の中を満たし、半ば呆然としたまま俺は歩き出した。
沖田が「ちょ、旦那ァ!」と呼ぶ声を聞きながらも聞こえないふりをして前へ進み、彼女との距離を詰めていく。真っ直ぐに前を見据えたまま彼女とすれ違い、彼女が視界から消えた瞬間に涙が滲んで目の前の世界が色を失った。
君は僕に気づかず、
隣を通りすぎる
(何てことはねェ、ただ、1つの恋が終わっただけだ)
銀さんがストーカーっぽくなってしまったwww
2009.9.13 春日愛紗