一世一代の大勝負【土方】
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真選組副長土方十四郎、俺は今人生最大の勝負を迎えようとしている…!
勝負というのは、その…3年間付き合ってきた彼女のナマエに……プ、プロポーズをしようと思っている。しかし、当然ながら俺にそんな経験は一切ない。勝手が分かんねェから、どのタイミングで何て言葉を伝えればいいのかがサッパリだ。一応、婚約指輪なるものは買ってきた。店員に勧められた、今時の若い娘に人気のデザインの指輪。これを渡したら、ナマエはどんな顔をするだろうか?こ、断られたらどうしよう…ダメだ、もしそんなことになったら立ち直れねェ。
ナマエとの待ち合わせの時間は午後5時。初デートのときに夕陽を見に行った丘の上に呼び出してある。つまり、俺に与えられたリミットはあと3時間半…それまでにプロポーズの言葉を考えなきゃならねェ。
俺は周りの人間に探りを入れてみることにした。
まずは近藤さんだ。毎日毎日志村妙に求婚してるんだ(毎日失敗してるけど)、何かポイントとかを調べているかもしれねェ。聞いてみよう。
「近藤さん」
「おう、どーしたトシ?」
「えーと…き、今日は志村妙に何て告白してきたんだ?」
「お妙さんに?そりゃ「ケツ毛ごと愛してくれェェェェ!!!」しかねーだろ!ガッハッハ」
「…そーかい。もういいわ」
「ん?何か聞きたいことがあったんじゃないのか?」
「いや、いい…」
ダメだ、近藤さんは参考にならねェ。ん?あっちからやって来るのは総悟……一応聞いてみるか。
「総悟」
「ん、何でィ土方コノヤロー」
「…お前、大好きな女にプロポーズするなら何て言う?」
「プロポーズゥ?そうさねェ…」
うーん…と、顎に手を当てて唸りながら考える総悟。今度は期待出来そうだ!
「あ、そうだ「俺だけのメス豚に「もういいわァアァ!!」…あり?何でィ自分から聞いといて」
全く参考にならん!そんなこと言ったらナマエドン引きだぞ!!総悟の嫁になる奴は大変だなオイ…。
「あ、副長ー!」
「山崎…は、いいわ」
「ちょ、何がですか!?」
どーせ山崎は地味なプロポーズしか出来ねェだろう。やっぱ自分で考えるしかねェか…。
「あ、副長!攘夷浪士どもの密会の現場が分かりました!!今夜動く模様です」
「何だと!?オイ、すぐ近藤さんに伝えろ。あと隊士全員会議室に集めとけ!!」
「はいっ!」
「御用改めである!真選組だ!!」
「うわ、逃げろー!」
「1人も逃がすなァアァ…!」
会議が行われる時間を見計らって部屋に突入。桂や高杉といった大物は見当たらなかったが、かなり大勢の攘夷浪士どもを検挙することに成功した。あとはコイツらを連行して…って、
「アァアアァ!!!」
「うわっ、何でィ土方さん!」
「ビックリさせんなよトシ~」
「い、い、い、今何時だ!?」
「今、は…7時半すぎですね」
「ヤベェエェ!!」
「あ、ちょ!どこ行くのトシ!!」
俺は無我夢中で走った。それはもう、今まで生きてきた中で最速じゃねェかってくらいのスピードで。しかしながら時間を巻き戻すことなんて不可能で、丘の上は小さな電灯が辺りを弱々しく照らしているだけだった。
「さすがにもう、いねェか…」
俺は目の前にあった黄色いベンチにドカッと腰を下ろした。
最悪だ。プロポーズしようとナマエを呼び出したのに、2時間半以上の遅刻。その上、せっかく買った指輪も屯所に忘れてきた。これはもう愛想尽かされても仕方ねェわ、終わったなコレ。
『十四郎…?』
「…へ?」
聞き慣れた声にそっと顔を上げると、目の前には心配そうに俺を見つめる愛しい愛しいナマエの姿。
『どうしたの?凄い汗…』
「え、お前っ…何で……」
まさかナマエがいるとは思ってなかったので、かなりキョドりながら言葉を発する。ナマエはキョトンとした顔をして、クスクス笑いながら俺の汗を拭いてくれた。
『何よ、十四郎がココで待ってろって言ったんでしょ~?』
「だってお前、待ち合わせ時間とっくに過ぎて…」
『ここに来る前、屯所の前を通ったのよ。そしたら隊士の方々が忙しそうにバタバタしてたし…何か事件があったんでしょ?仕事なら遅れても仕方ないじゃない』
そう言って優しく微笑むナマエ。ダメだ、やっぱり俺にはナマエしかいねェ。こんな俺を全て受け入れてくれるのは、ナマエしかいねェんだよ…!
俺は勢いよく立ち上がり、驚いているナマエを見つめて、決心した。
「ナマエ!俺と結婚してくれ!!」
『…へっ?』
「寂しい思いをさせるかもしれねェし、辛い思いをさせるかもしれねェ…けど俺は一生ナマエと一緒にいてェんだよ!!」
『十四郎…』
「…指輪は、忘れちまったんだけど…その、俺はナマエ以外ありえねェから!!」
必死になって頭を下げて言った。沈黙が怖い。プ、プロポーズってのはこんなに緊張するもんなのか!?
『…不束者ですが、』
「へ?」
ナマエの声にバッと顔を上げると、ナマエは目に涙をいっぱい溜めて笑っていた。
『一生、十四郎と一緒にいさせてください…!』
ヤバい、嬉しすぎて倒れそうだ。俺は今日この日に誓う。一生、死ぬまでナマエを愛し続けてやる。
一世一代の大勝負
(…本当に俺でいいのか?)
(当たり前でしょ、何言ってんの)
(絶対だからな、後から『やっぱやーめた!』とか言うのなしだからな!)
(はいはい、分かってるってば!!心配性だなァもう…)
トッシー企画、唯さまリクエスト作品。
2008.5.5 愛紗