酷い人【近藤】
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本当に酷い人です。あなたは。
こんなに想っているのに、ちっとも私のことを見てくれないでしょう?
ねえ、少しだけでも私を見て?
女中でなく、一人の女として…。
『あら近藤さん、またですか?』
「ナマエ!いやあ、この傷は愛情の裏返しなんだけどね…」
『ここんとこ毎日じゃないですか。ささ、薬塗りますから座ってください』
「いつも悪いね!」
『いえ…』
あなたは、知らないでしょうね。
毎日傷を作って帰ってくるあなたに薬を塗るときでさえ、私の指は震えていることを。
あなたに触れるというだけで、私の心臓が激しく鼓動するのを。
『はい、終わり……近藤さんもいい加減諦めたらどうですか?』
「いや、俺は負けんよ!お妙さんが俺に惚れるまで戦い続けるさ!じゃ、手当てありがとな、ナマエ」
『えぇ…』
“諦めたらどうですか?”
私もつくづく嫌な女ね。
絶対諦めない、って分かってるのに聞くんだもの。
「ナマエもいい加減諦めたらどうだ?」
近藤さんが去ってから救急箱を片付けていると、土方さんがやってきた。
『また、その話ですか?』
クスクス笑いながら部屋から出ようとすると、土方さんに腕を捕まれた。
「ハッキリ言うが、近藤さんは志村妙に夢中だ」
『分かってますよ』
「いいや、分かっちゃいねェよ。ナマエは分かった風にして、心のどこかで期待してんだ。もしかしたら近藤さんが振り向いてくれるかもしれねェ、って」
『そんな事…』
「お前は若いし、別嬪だし器量もいい。嫁の貰い手なんざ、近藤さん以外にもたくさんいるだろうよ」
『あら…じゃあ土方さんが貰ってくださいよ』
「なっ…!!?」
ふふ、心底驚いた顔してる。大丈夫よ。私は知ってるから。
『嘘ですよ。土方さんは三丁目の定食屋さんの看板娘に夢中ですものね』
「…っ!俺の事はどうでもいい。それより…」
『いいんです。私、今幸せですから』
「何で…」
『毎日好きな人に会えるなんて…凄く幸せな事だと思いません?』
「でもっ…!」
『大丈夫ですよ。きっといつか、前に進める日が来ますから』
「…そーかい」
そう言って、土方さんは部屋を出た。
ごめんなさい、土方さん。
私には勇気がないんです。
あなたの優しさに頼ることの出来ない、厄介な意地は持ってます。
それでも、いいんです。
例え近藤さんに好きな人がいても、私の想いは変わりません。
今日も、明日も
ずっとずっと
近藤さんのことを、好きでいます。
酷い人
(自分の幸せより、愛する男の幸せが大事かい)
(そんなに立派な人間じゃないですよ、私。ただ、我儘なんです)
2008.2.17 愛紗