拍手連載【土方】
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3
『十四郎、遅い~…』
「いやいや。俺ァ最短時間でここに駆けつけたつもりなんですが」
『あらら、走るの遅くなった?』
「ふざけたこと言ってんじゃねェぞ。さっさと靴履け」
はいはい、とか言いながら下駄箱から靴を取り出すナマエ。俺たちはそれぞれの部活が終わる時間が違うので(大抵俺のが遅いけど…)早く終わった方が、もうひとりを待っているのだ。下に落としたローファーに足を突っ込んだが、何か違和感があったのか『アレ?』と言って靴を脱いで、ひっくり返して振っていた。
「どうした?」
『何か入ってる……あ』
「何だよ」
固まるナマエの後ろから覗き込むと、靴の中にあったのは手紙のようで、それは例のごとく告白の為の呼び出しっぽい内容のものだった。
すぐにその手紙を奪って破ってやりたかったが、俺がキレる前にナマエは手紙を鞄に放り込んだ。その行為に少なからず安心した俺は、努めて冷静に声をかけた。
『…はぁ、』
「ため息とかつくなって。俺なんてラブレターの類いは貰ったことすらねェぞ」
『そりゃ沖田くんが十四郎に手紙が渡る前に全部消し去るからね。全力で』
「…総悟ォオォ!!!」
別にラブレターが欲しかった訳じゃねェが、明日アイツ絶対殴る。と心の中で決意を固めてナマエに尋ねた。
「嬉しくねェのか?」
先程のナマエの態度から、その手紙の送り主はナマエの意中の奴ではないらしい。
しかしながら自分に好意を寄せる人がいたんだ、その気はなくとも普通ちょっとくらい嬉しいだろ。
『んん、そりゃ嬉しいけどさぁ…この気持ちには応えらんないでしょ~』
そう考えると総悟の行為はありがたいものだったのかもしれない。ってこんなこと考えてたら、明日から総悟がイタズラ(?)しなさそうだ。
「残念だったな、好きな奴じゃなくて」
『ははっ、分かってたけどね~』
ラブレターくれるような人じゃないもの。なんていいながら笑うナマエの横顔はなんだか寂しそうで、俺までしんみりしてしまった。
ナマエが頼めば誰だってラブレターくらい書きそうなもんだ。もしかしてナマエも叶わぬ恋をしてるんだろうか…?そうだったら兄妹揃ってバカ野郎だ。
「大体、ナマエの好きな奴って誰なんだよ。俺の知ってる奴か?」
『どうでしょうね~?』
「テメッ、もったいぶるな!」
『ぎゃ!暴力反対ー!!』
そうやって帰り道で騒いでいたら、子連れのオバサンに【不憫な子を見る目】で見られた。さすがに恥ずかしくなったので、俺たちは急に大人しくなり会話がなくなった。
黙って歩みを進めながらも、頭に浮かんでくるのはさっきのナマエの顔ばかりだ。
誰がナマエにあんな顔させるんだ。
俺が行って殴ってやるから。
俺がナマエの笑顔を守ってやるから……だからそんな顔すんなよ。俺以外の奴を想って苦しんでんじゃねェよ…!!
『鈍い奴、なんだよね…』
「え?」
『鈍感で口が悪くて目付きも悪い。でも実は涙もろくて優しくて…いざというとき頼りになるの』
「…」
『でもね、その人は絶対に振り向いてくれないんだ。対象外だから、私は』
「ナマエ、」
『…ただいまーっ!お母さん、今日のご飯なにィ?』
気付かねェうちに、俺たちは家の前に着いていた。
あんなにツラい思いをしてまで好きな奴がいるナマエの邪魔なんて、俺にゃ逆立ちしたって出来ねェことだ。
「やっぱり、俺はアホだ」
向こうから聞こえる、『十四郎~!今夜ハンバーグだってェエェ!!』という叫び声に、つい綻んだ顔を元に戻して玄関に入った。自分の想いよりナマエの幸せを優先させるなんて…アホにしか出来ねェ芸当だ。
『十四郎、遅い~…』
「いやいや。俺ァ最短時間でここに駆けつけたつもりなんですが」
『あらら、走るの遅くなった?』
「ふざけたこと言ってんじゃねェぞ。さっさと靴履け」
はいはい、とか言いながら下駄箱から靴を取り出すナマエ。俺たちはそれぞれの部活が終わる時間が違うので(大抵俺のが遅いけど…)早く終わった方が、もうひとりを待っているのだ。下に落としたローファーに足を突っ込んだが、何か違和感があったのか『アレ?』と言って靴を脱いで、ひっくり返して振っていた。
「どうした?」
『何か入ってる……あ』
「何だよ」
固まるナマエの後ろから覗き込むと、靴の中にあったのは手紙のようで、それは例のごとく告白の為の呼び出しっぽい内容のものだった。
すぐにその手紙を奪って破ってやりたかったが、俺がキレる前にナマエは手紙を鞄に放り込んだ。その行為に少なからず安心した俺は、努めて冷静に声をかけた。
『…はぁ、』
「ため息とかつくなって。俺なんてラブレターの類いは貰ったことすらねェぞ」
『そりゃ沖田くんが十四郎に手紙が渡る前に全部消し去るからね。全力で』
「…総悟ォオォ!!!」
別にラブレターが欲しかった訳じゃねェが、明日アイツ絶対殴る。と心の中で決意を固めてナマエに尋ねた。
「嬉しくねェのか?」
先程のナマエの態度から、その手紙の送り主はナマエの意中の奴ではないらしい。
しかしながら自分に好意を寄せる人がいたんだ、その気はなくとも普通ちょっとくらい嬉しいだろ。
『んん、そりゃ嬉しいけどさぁ…この気持ちには応えらんないでしょ~』
そう考えると総悟の行為はありがたいものだったのかもしれない。ってこんなこと考えてたら、明日から総悟がイタズラ(?)しなさそうだ。
「残念だったな、好きな奴じゃなくて」
『ははっ、分かってたけどね~』
ラブレターくれるような人じゃないもの。なんていいながら笑うナマエの横顔はなんだか寂しそうで、俺までしんみりしてしまった。
ナマエが頼めば誰だってラブレターくらい書きそうなもんだ。もしかしてナマエも叶わぬ恋をしてるんだろうか…?そうだったら兄妹揃ってバカ野郎だ。
「大体、ナマエの好きな奴って誰なんだよ。俺の知ってる奴か?」
『どうでしょうね~?』
「テメッ、もったいぶるな!」
『ぎゃ!暴力反対ー!!』
そうやって帰り道で騒いでいたら、子連れのオバサンに【不憫な子を見る目】で見られた。さすがに恥ずかしくなったので、俺たちは急に大人しくなり会話がなくなった。
黙って歩みを進めながらも、頭に浮かんでくるのはさっきのナマエの顔ばかりだ。
誰がナマエにあんな顔させるんだ。
俺が行って殴ってやるから。
俺がナマエの笑顔を守ってやるから……だからそんな顔すんなよ。俺以外の奴を想って苦しんでんじゃねェよ…!!
『鈍い奴、なんだよね…』
「え?」
『鈍感で口が悪くて目付きも悪い。でも実は涙もろくて優しくて…いざというとき頼りになるの』
「…」
『でもね、その人は絶対に振り向いてくれないんだ。対象外だから、私は』
「ナマエ、」
『…ただいまーっ!お母さん、今日のご飯なにィ?』
気付かねェうちに、俺たちは家の前に着いていた。
あんなにツラい思いをしてまで好きな奴がいるナマエの邪魔なんて、俺にゃ逆立ちしたって出来ねェことだ。
「やっぱり、俺はアホだ」
向こうから聞こえる、『十四郎~!今夜ハンバーグだってェエェ!!』という叫び声に、つい綻んだ顔を元に戻して玄関に入った。自分の想いよりナマエの幸せを優先させるなんて…アホにしか出来ねェ芸当だ。