寡黙な男は目で語る【土方】
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私は貴方が大好きです。
いつも何にでも一生懸命な、貴方のその瞳が―…。
『トシ、まだやってんの?』
「ナマエか…お前こそまだいたのかよ」
ガラッと剣道場の戸を開ければ、汗だくになって竹刀を振り続けているトシの姿。他の部員はとっくに帰路についていて、剣道部で残っているのは私たちだけ。
マネージャーの仕事を終えたので、トシの邪魔にならないところにペタンと座った。
トシに片想いなんて、私はつくづくバカだと思う。彼は剣道のことしか頭にないし、顧問の意向でうちの部は男女交際禁止だ。いつの時代の規則!?と思われるかもしれないが、みんなはちゃんと従っている。
私が剣道部のマネージャーになったのは、少しでもトシの側にいたかったから。
中学の時は剣道部員だった私は、ずっと憧れていた土方選手と同じ高校ということで、入部当時テンションは上がりっぱなしだった。
「ナマエ、タオルくれー」
『ん、終わったの?』
あっつー…とか言いながら、トシはさっきまで振っていた竹刀を自分の場所に戻す。畳んだばかりのタオルを部室から取ってきて渡したら、「サンキュ」と私の大好きな笑顔で言ってくれた。
『もうちょっとだね、インターハイ…』
「明日から旅立つからな。1週間後にはもう引退だ」
洗っといて、と言ってタオルを渡したトシは、部室の中に入っていった。
残念ながら団体戦での出場は逃したものの、予選でトシが個人戦で優勝したので、トシだけインターハイに行くことになっている。
私たちの期待を一身に背負うトシへのプレッシャーは相当デカいハズなのに、ものともせず稽古に励むトシは本当にカッコよかった。
受け取ったタオルを洗濯物入れのカゴに放り投げると、着替えているのであろう部室の方から声がした。
「ナマエ!悪かったな…俺の為にお前まで引退が遅れちまってよ」
『…悪いと思ってんなら、絶対負けんな』
「んなもん当然だ。ところでよ、」
『ん?』
「…引退した後、お前どーすんだ?」
窓の鍵をチェックしていたら、いつの間にか部室から出てきていたトシにされた質問は、何て答えればいいのかよく分からなかった。
『何それ、どゆこと?』
クスクス笑いながらトシの出てきた部室の窓の鍵もチェックして、あとは入り口の戸を閉めればオッケーだ。
「恋愛禁止、解けるだろ」
『…相手がいないもん。その点トシはいいよね、絶対告白の嵐だよ』
壁側に置いといた鞄を掴んで、2人で外に出て鍵を閉めた。冗談っぽく言ったが、胸がチクリと痛んだ。
「俺ァ本命がいるんでね…」
『…そーだったんだ、んじゃあと1週間の辛抱じゃん』
「だな」
トシと私は同じ駅を利用しているので、必然的に行く方向は同じ。さっきの本命発言を聞いてしまった今は、駅までの道のりが果てしなく長く思えた。
「だけどよ、もう我慢出来ねェんだ…予約しとこうと思って、」
『…?』
乗る電車の路線が違うのでココでお別れ、という場所でトシは立ち止まった。自然と私の足も止まる。
「俺…ナマエのこと、ずっと前から好きだったんだ!……1週間後また、同じこと言うからさ…その時は返事聞かせろよな!!」
言いたいことだけ言って、トシは人混みの中に消えてった。言い逃げですかコノヤロー…。
頭の中には憎たらしい言葉しか浮かんで来なかったけど、私の顔は終始緩みっぱなしだっただろう。
貴方から離れるのが嫌で、来なくて良いと思い続けていた来週が一気に待ち遠しくなった。
寡黙な男は目で語る
(ずっと前から、って言ってたけど…いつから好きだったの?)
(ち、中学の時から…)
(……マジでか)
うわわわわ、コレ切ないのか?甘いのか?
こ、こんな感じでよろしいでしょうかさき様…?
こんなので良ければ捧げさせていただきます!
2008.3.15 愛紗