涙のあとは【沖田】
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3月3日、今日は銀魂高校の卒業式。
教室の自分の席に座り、朝の受付でもらった卒業生が胸につける花の飾りをじっと見つめ、ああ本当に今日で卒業なんだなと遅い認識。
春のクラス替えで3Zになった時は、うわっもうコレ最悪。とよく凹んだものだけど、実際このメンバーで高校生活最後の年を過ごせて最高に楽しかったと思う。
そして何より総悟に出会えたから…。
「ナマエ、花飾り曲がってやすぜ」
『う、うるさいなあ!』
何をやっても不器用な私と、何をやっても器用にこなす総悟。最初こそ憎たらしかったが、普段はドSのくせしていざとなるとフォローしてくれる総悟に私は惚れてしまったのだ。
ただそのことを妙ちゃんとかに話しても「あんなドSのどこがいいの?」と全く相手にしてもらえなかった。
『総悟ォ~、』
「何でィナマエ」
『私たち、今日で卒業なんだよ』
「今更何言ってんでィ。とうとう頭イカレちまったのか?」
『こうやって総悟の憎まれ口を聞くのも今日で最後なんだァ…』
「…明日からナマエの嫌味聞かなくてすむなんて、せいせいすらァ」
バカじゃないの、本当は寂しいんだよ。気付いてよ。
アンタって変に勘が鋭いじゃないのよ。何で私の気持ちを察してくれないのよ。
なんとも自分勝手な要求は口に出さず、心に仕舞っておいた。
総悟の思い出の中の私が、少しでも【いい女】として残るように―…。
式も終わり、教室はまるで宴会のような大騒ぎ。
さっきまでは私もみんなの輪の中に入って騒いでたけど、何だか疲れたので自分の席に戻ってボーッとしていたら総悟も輪を抜けて私の隣の机に座った(行儀悪い!)。
「ナマエ、チャイナたちと騒がねェのか?」
『あー…疲れた。神楽ちゃんたち体力底なしなんだもん』
「ふーん…」
自分から聞いておいて興味なさそうな返事をする総悟にちょっとイラッとしながらも、好きな人と最後まで喧嘩は嫌だと思って黙っておいた。
「ん」
ワイワイやってるみんなを見て、いつになったら終わるんだろう…と若干引いていたら、いきなり総悟が右手を突き出してきた。その手に握られていたのは、卒業生の花飾り。総悟の胸を見るとその飾りがないので、きっと総悟の物だろう。
『何?』
「交換してくれィ、ナマエのと」
ハァ?と思って総悟の顔を見ると、今までに見たことがないほど頬が紅潮していた。
『何でよ?』
「…お前この学校の伝統知らねェのかィ?」
銀魂高校の伝統?
ご飯は残さず食べるとか、学校に持ってきていい雑誌はジャンプだけとかいう伝統?
いやいやでも総悟は花飾りを交換しろって言ってきてるわけだし、何かこれに関係する伝統……あ、何だったっけ。聞いたことある気がする。確か卒業式の日に………アレ?
私が知っている噂が総悟の言っている【伝統】と同じだとすると、総悟の行動は不可解極まりない。
だとすると差し出されたこの花飾りには何の意味があるのだろうか?
『総悟、わかんないよ』
「本当に?」
『いや…卒業式の花飾りに関する話は聞いたことあるけどさ、でも…』
「俺がナマエと花飾りの交換をしたがる理由がわかんねェ、と?」
『…うん』
「きっと、ナマエが知ってる噂…そのまんまの意味でさァ」
有り得ないよ。だって私が知ってる噂は【卒業式の日には好きな人と花飾りを交換するとずっと一緒にいられる】というもの。だってこれに総悟の行動をそのまま当てはめれば、総悟は私を好きってことで…アレ?そう考えると全ての辻褄があってくる。でも、それは…。
「…ハァ、ニブチンのナマエに遠回しに言った俺がアホだった」
『何だと!』
「ナマエ、俺ァナマエのことが好きなんでさァ」
サラリとそんなことを言われて、私の周りの空気が一瞬止まる。何よソレ。不意打ち?ズルいじゃない、こっちにだって心の準備ってモンが…。
頭ん中で色んな事がぐるぐる回ってて、有名な曲から言葉を借りれば思考回路がショート寸前の状態だ。
気が付けば、涙が一筋流れていた。
「…その涙は、『私も』って意味で取っても良いんですかィ?」
『…っ、』
不器用な私は上手く呼吸が出来なくて声が出なかったので、何とか自分の胸の花飾りを外して総悟に渡し、同意の意思を示した。すると器用な総悟はニコリと微笑んで私の手に総悟の花飾りを乗せてくれた。
まだ流れ続けている私の涙を指で掬い上げて、可愛い。なんて言っちゃって。
いつからそんなに優男キャラにイメチェンしたのさ!
「でも、」
涙のあとは
(笑顔が見たいんですけどねィ)
(泣いてるのは総悟のせいなんだから…!)
(ハイハイ、悪かったって)
そ、総悟の話し方が分からんorz
2008.2.28 愛紗