女は怒ると別人になる【土方】
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俺には同棲を始めて半年になるナマエという彼女がいる。めちゃくちゃ可愛いし気立てもいいし…告白を受け入れてもらえた時は、マジで夢かと思った。
俺は死ぬまで力の限り、ナマエを愛していくことを誓う!
「じゃあ、行ってくるからな」
『いってらっしゃい、お仕事頑張ってね!』
ある日突然事件は起きた。
その日の朝は普段通り、ナマエの笑顔に見送られて家を出た。
屯所までの道を歩きながら、あと12時間もしないとナマエに会えないのか…といったようなことを考えていた。いつものことだ。
『~♪』
昼の休憩に電話したときも、洗濯が上手くいっただの、マヨネーズが安売りしてただの、他愛ない話をした。
なのに…。
『…ん?これは……!』
何でだ!?何でなんだ!?
夜、仕事を終えてナマエの待つ家に急いで帰った。いつもより特別遅くなった訳でもないし、酔っぱらっていた訳でもない。
ナマエの機嫌を損ねるようなことは何もしていないはずなのに…。
通常なら俺が玄関を開けるとナマエが急いで走ってきて、俺の大好きな笑顔で『おかえり!』と言ってくれる。なのに、今日はそれがない。
「ナマエ…?」
『あ、おかえり。すぐご飯にするから』
一応会話はしてくれるが、声に明るさがない。冷たい。俺の全身の汗腺から冷や汗が噴き出すのが分かる。
何かしたか?と思ったが何も心当たりがなく、疑問に思いながら着替えに行く。
『…』
「…」
食事中、一切の会話がない。
普段は『おいしい?』って聞いてきたり、その日あったことを話してくれる。
それに、今日はマヨネーズが食卓に出ていない。いつもなら俺が取りに行くより先に、当たり前のようにテーブルに出ているはずなのに。
食事開始から30分程経って、ようやくナマエが口を開いたかと思えば『ごちそうさま』の一言。
…絶対怒ってる!な、何で!?
その後も黙りを決め込むナマエは無言で皿を洗い、今は雑誌を読んでいる。
その目にはいつもの優しさではなく、明らかに怒りの色が見えた。
今まで約1年間付き合ってきて、ナマエがこんなに怒ったのは初めてだ。
些細なことでナマエが拗ねたりはしたが、よく考えると喧嘩もしたことがない。第一ナマエに対して怒る要素が見つからない。
どうしていいか分からない俺はとりあえずナマエの気を引こうと、俺とナマエの大好きな【となりのペドロ】のビデオを観ることにした。
「…あ~、やっぱりペドロには癒されるなァ~……」
『…』
「…あーあ、ペドロってばおっちょこちょいだなあ……なあナマエ?」
『……』
無視ィイィィイ!!?
完全無視されたんですけどォ!
こっちを見ようともしないナマエの顔をチラッと見やると、何かを我慢しているように下唇を噛んでいた。
ああっ、そんなに噛んだらナマエの可愛い唇が切れちまうだろ!
結局その後ナマエと一切会話することはなく、1日が終わってしまった。(寝るときまでナマエは俺を拒絶してベッドのはじっこで寝てたので、一切触れなかった!)
次の朝は珍しく目覚まし時計の音に起こされて起床。
今日は何でナマエが起こしに来てくれねェんだ?と思ったら、どうやら昨日のがまだ続いてるらしい。
顔を洗い隊服に着替えてテーブルに行くと、いつもの朝ご飯(マヨネーズ無し)が出されていた。
何でだ!またマヨネーズがない!!これは俺を試しているのか?マヨネーズとナマエのどちらをより愛しているかを試しているのか!?
んなもん答えは決まってる。問答無用でナマエだ。
昨日からの態度は俺に対する挑戦だと受けとり、ナマエの気がすむまではマヨ絶ちをしようと心に固く誓った。
『仕事、行くの…?』
昨日からの無視攻撃により(俺の受けたダメージは計りしれねェ)、今日はいってらっしゃいの挨拶もないだろうな、と思っていたら急にナマエが声をかけてきた。
え、待って、ナマエの声聞いたの何時間ぶり?
何だか感動で涙が出そうになったがなんとか堪え、平常心を保って返事をする。
「当たり前だろ。それ以外に可愛いナマエを置いて家を出る理由が見当たらねェ」
『…ふーん』
真剣な表情で言ったはずなのに、先程のあまりの感動によって顔がにやけていたのか、大して興味をしめさずに部屋の中に入っていってしまった。
何で!?どうして!?
ナマエは何故怒ってるんだ!
「土方さん」
俺が屯所に着くと、真っ先に声をかけてきた総悟。
何か企んでるような顔をして近付いてきた。
「何か用か」
「土方さん、昨日携帯を家に忘れてやしたよねェ?」
「…それがどうした」
確かに俺は昨日携帯を忘れた。午前中そのことに気付いたが、問題ないと思ったので取りに戻らなかったのだ。
「もしナマエちゃんの携帯が目の前で鳴っていて、ナマエちゃんがその場にいなかったら、ディスプレイくらい見ますよねィ?誰からの着信か気になるでしょう?」
「…まあな」
わざわざ携帯を見て浮気してねェかチェックするようなことは絶対しないが、目の前で鳴ってたら普通に名前くらい見るだろ。
「ナマエちゃん昨日、怒ってたでしょ?」
「何でそんなこと知ってんだよ!!」
「さあねィ」
意味深な言葉を残して去っていく総悟。
携帯がなんだってんだ?ナマエの怒ってた理由と関係あんのか?
今日は忘れずに持ってきた携帯を開き着信履歴を見ると、ナマエとは別の女の名前が出てきた。
こんな名前の女知らねェぞ、と驚いてメールの受信ボックスを見ると、これまた知らない女の名前で何通かメールが届いていた。メールは未読のままだったが、これが届いたときにディスプレイには名前が表示されていただろう。
「まさか……」
電話帳を開き、謎の女の名前を探すと…やっぱりそうだ。総悟のアドレスや電話番号がその女の名前で登録してある。
「あのクソガキ…!!!」
そう、犯人は総悟だった。昨日ナマエはこの着信を見て浮気だと誤解したんだ!
そうと気付くと、いてもたってもいられずに屯所を飛び出した。
「ナマエー!!!」
ナマエを呼びながら家に飛び込むと、ナマエはかなり驚いていた。無理もない、こんな時間に家に帰ってきたんだから。
「お前は誤解している!俺は浮気なんてしてない!」
『…え?』
「携帯見たんだろうけど…これは総悟のイタズラだ!!俺はこんな女知らん!」
『総悟、くんの…イタズラ?』
「当たり前だろ!ナマエよりいい女なんてこの世に存在しないのに、わざわざ浮気する理由がないだろ!!」
『…っ!』
俺は本当のことを言ったまでだが、ナマエは顔を真っ赤にしていた。が、次の瞬間にはボロボロ涙を溢して泣き始めた。
『…ごめん……』
「ナマエ…」
『トシのこと、疑った…!……私、最低だよ…』
涙を流して必死に謝るナマエを見て、どうしようもなく抱き締めたくなった。
「バカだな…」
ナマエの背中に手を回してギュッと抱き締めると、ナマエはゆっくりと呼吸を整えて泣き止んだ。
『ゴメンね?』
「…俺ァ昨日死ぬかと思ったわ。ナマエが無視するから」
『うっ…!』
「…嘘だよ。あ、いや本当だけど…。これからもナマエが俺の側から離れないって約束するなら許してやる」
そう言うとナマエはポカンとした面して、そんなんでいいの?と聞いてきた。
「まぁ、嫌だって言っても手離す気はねェけどな」
『トシ…』
何だかいい雰囲気になってきたので、ナマエにキスしようと思って顔を近付けると…。
ピリリリリリ!
最悪のタイミングで携帯が鳴った。邪魔すんなよ!と思いつつも着信を確認すると、サド王子だった。
『トシ、仕事に行かないと…!』
「あ…」
仕事なんてすっかり忘れていたが、戻らない訳にもいかねェ。名残惜しいがナマエから手を離して玄関へ。
今日の夜は仕事を早めに切り上げて、ナマエの大好きなケーキでも買って帰ろうと思った。
女は怒ると別人になる。
(ねぇトシ、昨日本当に死んじゃいそうだった?)
(バカ、当然だ。)
彼女溺愛トシくん。
あ、愛されてぇ…!←
2008.2.22 愛紗