三夢
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本当ならば今すぐにでも鈴を連れ出してやりてェ。しかしながらそんなことをしたら、どうなるかなんて分かりきったことだ。しかも鈴が自分を犠牲にしてまで守った弟にもどんな危害が及ぶかなんて、想像に容易い。
やりきれねェ思いを抱えたまま、チラと腕時計で時間を確認して重い腰をあげた。
「そろそろ閉店だろ?今日は悪かったな、来るのが遅かった」
俺がそう言うと、『そんなことないですっ!』と言って立ち上がり、見送るために俺と一緒に店の外に出た。
『私、土方さんに会えただけで十分ですから!』
バカヤロ、お前絶対確信犯だろ。そんな笑顔でそんなこと言っていいと思ってるのか?
自分の心臓が物凄くドキドキしているのが分かる。鬼の副長なんて呼ばれてる男が、たった一人の女にこんな振り回されていると思うと何か悔しくなり、またも意地の悪い言葉をかけた。
「…どーせいろんな客に同じこと言ってんだろ」
言った後ですぐに後悔した。鈴の傷付いた表情を見て、俺はなんてことを言ってしまったんだと思った。
微妙に俯いていた鈴はキッと顔をあげて俺の両頬に手を当て、俺をかがませた。そして、潤んだ瞳と紅潮した頬をした鈴の顔がだんだんと近付いてきた。
『先にケンカ売ってきたのは、土方さんですからね…』
そう言って鈴は、俺の唇に自分のそれを重ねた。本当は数秒だったのであろうが、俺にはその時間が酷く長く感じられた。
唇が離された次の瞬間、鈴は走って店の中に戻った。俺はポカンと立ち尽くし、さっきまで鈴と繋がっていた唇に指を当てて何が起こったのかを考えた。それを理解するまでに、かなりの時間がかかった。
<hr />連載第三話。
大胆なヒロイン。
2008.8.5 春日愛紗