二夢
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『私の、笑顔ですか…?』
彼女の顔に若干の焦りが見えた。今まで気付かなかったのだろうか、自分の笑顔の不自然さに。
アァ、と短く返事をして、再びグラスに口をつけた。
「こんな下手くそな笑顔見たことねーよ。何があったかまでは聞かねェが、その顔やめろ」
『…っ』
娘は一瞬悔しそうな表情を浮かべたが、観念したかのようにフゥと息をはいた。
『何となく気付いてはいました、昨日土方さんと目が合ったときから』
「ほぉ、」
『あの時の土方さんの表情…普段私に向けられる目とは違った。正直、少し驚きました。土方さんは私の外など見ていない、きっと中を見ているのだと…』
「…」
『……あ、すみませんこんなこと話して。ささ、どうぞ飲んでください』
「続き、話せ」
『え?』
俺が続きを促すと、娘はきょとんとしていた。
「聞いてやる、お前の話。そのために今日は来たんだ」
『そう、だったんですか…』
娘は苦笑いをして、軽く俯いて話し始めた。
『私が何でここにいるかは、きっと妙ちゃんに聞いてますよね……私が御館様に囲われたときに、言われたんです。お前は笑っていればいい、それだけでいいと』
右手に握ったトングで氷をいじりながら、彼女は話を続けた。
『それから、ずっと笑っていようと決めたのです。私が笑っていれば御館様は満足なさるので』
「…」
『そうしているうちに、本当の笑い方を忘れてしまいました。いつの間にか、この表情が張り付いてしまって』
彼女は氷をいじる手を止め、膝の上でキュッと両拳を握りしめていた。俯いているので表情は読み取れないが、きっとまたあの笑みを浮かべていることだろう。
「バカか」
『え?』
ずっと黙っていた俺が一言発すると、彼女は驚いたように顔をあげた。
「笑おう、って意識して笑うもんじゃねーだろ。バカか、お前バカなのか?」
俺があまりにもバカバカと連呼するので、娘もカチンと来たらしく立ち上がって抗議を始めた。
『…私、こんなに人からバカって言われたの初めてです!』
「ほぅ。お前の周りにいたのは、お前を上回るバカばっかだったらしいな」
『何でですか!あと私はお前という名前ではありません、鈴という名前があるんです!』
「鈴、お前子供みたいな反抗してんじゃねーよ」
『私はまだ子供です!18なんですから!』
「…18!?」
鈴の驚きの発言に口論が止まった。18?18って言えばお前、総悟とタメじゃねーか!
「…嘘だ」
『なっ!嘘じゃありません!』
先程の息もつかねェ言い争いに疲れたのか、肩で息をしながら再び抗議をしてくる鈴の顔は、昨日よりかなり自然な表情が浮かんでいた。
「…鈴、お前だいぶいい顔になったじゃねーか」
『え?』
気付いていなかったのだろうか、はたと動きを止めた鈴はストンとソファーに座った。