一夢
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次の日、俺は見廻りの途中でATMに向かっていた。何故か、ってそんなの愚問だ。口座から半月分の給料を引き出すために決まっている。
昨日、酔っぱらった近藤さんを引きずった帰り道、俺はずっとあの娘のことを考えていた。
見た目は20代前半、下手したら同い年かもしれねェ。整った顔立ちに綺麗な着物、そしてあの張り付けたような笑顔……俺はあの笑顔が気になって仕方なかった。俺が見ていたときは、常にあの顔のまま固まっていた。確かに美しかったが、下手くそな笑顔だった。
昨日聞いた娘の買い主は、相当な権力者で贅の限りを尽くしているような奴だ。普段も何不自由ない生活を送っていることだろう。それでもやはり、心からは笑えねェんだな…。
「よし、戻るか…」
特に使うところもなかったので振り込まれっぱなしだった口座から、久しぶりに金が引き出された。
自分でもバカだと思う。全く関わりのない娘のために汗水垂らして稼いだ金を使うなんて……考えられなかったことだ。しかもその理由が、ただあの娘の本当の笑顔が見たいから、と来た。バカバカしいことこの上ないが、それでも俺は今夜の予定を動かさなかった。
「土方さん、ご指名は?」
勤務時間中はキッチリ働き、着流しに着替えた俺は再びスナックすまいるに来ていた。指名を聞かれ、昨日志村妙から聞いた娘の名前を告げた。
「鈴、鈴で頼む」
<hr />夏休み連載第一話。
な、名前変換少ない!
2008.7.20 春日愛紗