七夢
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いつもは夜明け前に店を閉め、朝日が上がった頃にようやく片付けが終わってみんなは帰っていくけど、今日は早めに切り上げて私のお別れ会を開いてくれた。
1つのテーブルにみんなが集まって、私を中心に据えて大騒ぎ。正直、すごく居心地がよかった。
「安寿ちゃん…ううん、鈴ちゃん!今までありがとう!」
『こちらこそ、良くしてくれてありがとう!妙ちゃん』
「もう一緒に働けないのねーなんか寂しいわ」
『…私もだよ、阿音ちゃん!』
みんなが代わる代わる声をかけてくれて、本当に嬉しかった。短い間だったけど…友達が出来たみたいで楽しかった。
小さい頃に戻ったみたいに、たくさんの友達と一緒に盛り上がっている時間が過ぎるのはとても速くて、店長さんの「そろそろお開きにしようか」という声を聞いて、なんだか胸が苦しくなった。もう、お別れなんだ…。
「そうね、そろそろ来るだろうし…」
『…え……?』
「鈴ちゃんの王子様、迎えに来るんでしょう?」
『私、の…?』
「やぁね、土方さんに決まってるじゃない!」
何で、何で土方さんが来ることをみんなが知っているの?
突然のことに驚いた私は声も出せずにいた。周りのみんなは優しく笑って「早く行かないと、待たせるわよ」と声をかけてくれた。
私の目からはポタリと涙がこぼれ落ちて、絨毯に染みを作った。それでも言わないといけないことがあったので、それを拭って顔をあげた。
『ありがとう、みんな…!』
その時私は思った。今、私は自然に笑えている。この笑顔も、生きる希望も、人を愛するということも、全部全部…土方さんが教えてくれた。
私はみんなにもう一度お礼を言い、小走りでお店の入り口に向かった。
ゆっくりと引き戸を開けると、土方さんは傘を持って立っていた。外はいつの間にか、雨が降っていた。
『…土方さん』
「来たな。返事、聞かせてくれるか?」
『私……』
私は唾をゴクリと飲み込んだ。自分の手をギュッと握りしめて、土方さんの目を見つめていった。
『私…土方さんと一緒に行くことは出来ません』
自分でもわかるほど、声が震えた。