六夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「鈴、こっちだ」
定食屋さんを出た後、土方さんに手を引かれて着いたのは町から少し離れた小高い丘の上。そこには小さなベンチがあるだけで、明かりも弱々しい電灯が1つだけ。ここに私を連れてきた土方さんの意図が分からず、頭の上にハテナマークを浮かべて土方さんの方を見ると、私の気持ちを理解したのか「まあ見てろ」と言って東の空を指差した。
何…と思いつつも土方さんが指差す方に目を向けるが、そこに広がるのは何の変哲もない暗い空。疑問がますます膨らんで、謎は深まるばかりだった。
『土方さっ…』
東の空を見ろ、という土方さんに理由を聞こうとそちらに目を向ければ、私の顔の左側と土方さんの顔が何かに照らされた。
何事かとそちらを見れば、光より少し遅れてドーンという音を響かせながら、大輪の花が夜空に咲いていた。
『花火…』
「5年くれェ前から毎年この日は、夏も最後っつーことで花火が上がるんだよ。知らなかったろ」
『ええ…とても綺麗……!』
「…喜んでくれたみてーだな」
パッと綺麗に咲いて儚く散っていく花火を見ていると、何だかとても切なくなった。しばらく見た後でハッとして、目線だけ動かして土方さんを盗み見た。
土方さんは花火を見て、小さく微笑んでいた。本当にカッコいい。
でも土方さんと会えるのは今日で最後。明日からはまた御館様に囲われる日々が待っているんだ。だから、今日だけは…今日だけは土方さんの隣で笑っていたい。あなたの表情一つ一つを、取り零さないように見ていたい。
きゅうと胸が締め付けられるような感覚にとらわれて、涙が溢れそうになった。
泣くな、
泣いちゃダメ
泣いたりなんかしたら
土方さんの顔がよく見えない。