六夢
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店の入り口の引き戸をガラリと開けると、そこにはタバコをくわえた土方さんがいた。
『ひじ、かたさんっ…!』
「お、来たな。行くか」
『あの、どこへ…?お店は…』
「店長に許可は取った。今日は俺に付き合ってもらうぜ」
そう言って子供みたいに笑う土方さんは、とても可愛かった。自然と繋がれた右手に、私の全神経が集中していた。
「どっか行きたいとこあるか?」
『えーと…私、あまり外には出ないのでわからないんですよね。土方さんのお任せ…っていうのはダメですか?』
そう言って控えめに土方さんの方を向くと、目を細めて優しく微笑んでくれた。
しばらく歩いて着いた場所は、「定食屋」という看板が掲げられたお店だった。引き戸をガラリと開けた土方さんに続いて店内に入ると、そこでは何人かの人がご飯を食べていた。
「いらっしゃい、土方さん!」
「土方スペシャル、2つ」
「へい!」
店長さんらしき人と向かい合う席に座り、私は初めての定食屋さんをぐるりと見回した。
『へぇ~…定食屋さんって、料亭みたいなものですか?』
「料亭って…」
「おや、そちら良いとこのお嬢様ですか?」
『えっ?あっ…』
「まぁそんなもんだ」
何て返答すればいいのか困っていた私にフォローを入れてくれた土方さんに小さな声でお礼を言い、店とは別の場所で土方さんの隣に座っていることに何だかくすぐったさを感じた。
「どうぞ、土方スペシャル!」
『わぁ…!』
「これが一般市民の食べ物だ」
「はは、これは土方さん専用ですぜ。気を付けて食べてください」
「何でだオイッ!こっち見ろオヤジ!目ェ逸らしてんじゃねェェ!」
『いただきます!』
割ってもらった木製の箸で一口分掬い、ゆっくり口に運ぶと何とも言えない味がした。
『おいしい…!』
「だろっ!ほら見ろ理解者がいた、ふははは!」
勝ち誇ったように店長さん(らしき人)に言う土方さんを眺めて、私は小さな声でポツリと呟いた。
『きっと、土方さんの隣で食べてるからでしょうね』
「あ?何か言ったか?」
『いえ、何も…』
届かない言葉は、届かないままでいい。私の中で、大事にしまっておけばいい。
美味しそうに土方スペシャルを頬張る土方さんを見て、私はとても幸せを感じた。