五夢
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鈴の過去を初めて聞いた。俺の想像を絶するほどツラかっただろう、しかし鈴は涙を溢さなかった。必死に我慢し、じっと俺の目を見ていた。
「…ツラかったな、」
俺はそう言って鈴の頭にポンと手をのせ、ゆっくりと撫でた。
「ありがとよ、俺に話してくれて…」
『土方さんには、知っておいてほしくて』
そう言って笑った鈴の目は憂いを帯びていて、更に衝撃の事実を明らかにした。
『…実は、攘夷浪士を差し向けたのは御館様なのです。私を得たいが為に、何の罪もない両親を襲撃させたんです』
「…何だと?」
『明確な証拠はありません。でも囲われ始めの頃、屋敷に犯人たちがチラホラいるのに気付いたんです』
「まさか…」
『その時、弟も遠い町で殺されたと聞きました。私にはもう、誰も家族がいないのです…』
何て酷い。鈴を得たいが為にその家族を殺し、更には彼女の自由さえも奪う。悲しげに笑う鈴を見て、俺は決意した。
「明日…」
『え?』
「夜8時、迎えに来る」
『何…』
何を言われたのか分からず、ポカンとしている鈴を尻目に俺は席を立った。
慌てて見送りのために俺の後についてくる鈴をチラと確認して、店の中からは死角になる角を曲がった瞬間…俺は鈴を逃がさねぇように壁に手をつき、俺と壁の間で戸惑っている鈴の小さな唇に夢中で自分のそれを重ねた。
「明日の、予約だ…」
何が起こったのか理解出来ていない鈴を残して、俺は若干雨がぱらつく外へ出た。帰ったらすぐ近藤さんに伝えよう。取り締まるべき人物がいると。
<hr />連載第五話。
明らかになった過去。
2008.8.26 春日愛紗