五夢
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御館様に囲われてからは、御館様以外の人間とはあまり話したことすらなかった。それにここに働きに来たときも、このことだけは誰にも話さなかった。
でも、土方さんには私のことを知ってほしかった。今の私だけじゃなく、過去の私も。
私の反応に気付かないフリをしてくれる土方さんの優しさを感じながら、言った。
『聞いてもらっていいですか?』
「…話して、くれるのか?」
『はい。実は、私の親……攘夷浪士に殺されたんです』
「…」
土方さんの眉がピクリと動いた。私はそんな土方さんの目をしっかりと見据えて話を続けた。目を逸らすと、涙が溢れてしまいそうだったから。
『本当の理由はよくわかりませんが、多分私の家が古くから幕府に使える家系だったからだと思います』
「…そう、なのか」
『ええ。子供は私と弟だけだったので、両親と奉公人たちが必死に家から逃がしてくれて。でも10歳ほどの子供たちだけで逃げ切るなんて、初めから不可能だったのです』
「見つけたぜェ…兄貴、どうしますかこのガキども」
「娘の方は傷を付けるなよ。弟の方は殺せ」
『弟には手を出さないで!』
「おーおー、美しい姉弟愛だな」
「姉上!」
「お嬢ちゃんが俺たちについてきてくれりゃ、何も問題ないんだかなァ…?」
『……わかりました、行きます』
「あ、姉上!」
『その代わり、弟は…』
「あぁ、約束だ。手は出さねェ」
「行くぞ」
「姉上っ…!」
『…元気でね、』
そこまで言うと、私はギュッと下唇を噛み締めた。じわりじわりと滲んできた涙を必死に堪え、ゆっくりと息をはいた。