五夢
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「でもよ…」
土方さんがコップを持つ手を軽く動かすと、それに合わせてカランと氷が音を立てる。
私は土方さんの言葉を一句残らず聞き取ろうと、黙ったまま土方さんの目を見つめた。
「やっぱ悪ィわ、払う」
最初は何のことかと思ったが、どうやらそれは私の指名料のことらしい。土方さんのためを思ってしたことだが、もしかしたら逆に気を遣わせてしまったのかもしれない。
いいですよ、いや払う、という押し問答をしばらく繰り広げ、このままではキリがないなと思った私は、勇気を振り絞って土方さんにお願いをした。
『じゃあ、明日も……ここに来てもらえます?そのお金は、その時の指名料として頂きます!』
「…バカ、元から明日も来るつもりだったんだ。明日は明日で払う」
『そ、それじゃあこのやり取りが延々と続くじゃないですか!』
「…それもそうだな」
私が『明日も来てください』とお願いしたら、さも当然のように返された「そのつもりだった」との発言に自分の顔が赤くなっていくのを感じながら、顎に手を当てて何かを考え込んでいる土方さんの横顔を眺めた。
男の人なのに長い睫毛、長い指、広い肩幅、店の空調に合わせてサラサラと揺れる漆黒の髪……全てに夢中だった。この人を一生涯愛していけたら、どんなに幸せなことだろう。
そう考えると、胸が締め付けられるような思いだった。
「よし、わかった。今日は鈴の厚意に甘えさせてもらう」
『本当ですか!?よかった!』
ありがとな、と少し照れながら言う土方さんが何だか可愛くて、全てを目に焼き付けておこうと思った。一生、忘れないように。
『そう言えば…来られるのがいつもより少し遅めでしたね、今日』
お仕事でしたか?と聞くと「あぁ」と短く返事をした土方さんは、一口お酒を飲んで言葉を続けた。
「攘夷浪士の取り締まりだ。最近また活動し始めてな…」
【攘夷浪士】という単語を聞き、私の体はビクッと跳ねた。土方さんがチラッとこちらを見たのに気付いた私は、震える唇をゆっくりと開いた。