好き、かも
「[#dn=2#]ーっ!聞いたよ~?」
『は?何が?』
大学に着くと、友達数人がニヤニヤしながら近付いてきた。バカ男と別れたことだろうか?でも、それならニヤニヤしてるハズないよね…。
「昨日、イケメンとデパート行ってたらしいじゃん?何々、浮気ィ~?」
『ぶっ!!』
「あー!過剰な反応!!これはもう完全にクロですよ」
「吐いちゃえ、吐いちゃえ~っ」
き、昨日の見られてたの!?まあそれはいいにしても、トシは彼氏なんかじゃない!…そ、そうなれたらいいな、って希望は……そりゃ少しはあるけど…。
『ご、誤解誤解!まず1つ目、私はアイツと別れた。そして2つ目、トシは彼氏じゃない!』
「トシくんっていうのー!?」
し、しまった…。
「すっごいカッコいいらしいじゃん?会わせて会わせて~っ!!」
『いやっ、無理だってば…!』
「いいじゃない、ケチー!」
「今日は学校終わったら[#dn=2#]の家に押し掛けるわよ!もう、吐くまで帰らないわよ!!」
『エェエ!ダメー!!』
「あ、もしかして同棲してるとかっ?」
『うっ…』
「マージーでー!?やっぱ彼氏じゃん!会いに行こー!」
「「おーっ!」」
ああああ!マジでか、こーいう展開ィイィ!?!?友達のパワーに圧倒されてしまい、帰りにうちに来ることになってしまった。
「あー楽しみ!」
「どのくらいカッコいいのかな?」
「てゆーか何よ、その大量のマヨネーズ…」
『トシの好物なの。み、みんなバイトとかないの?』
「今日休み」
「「私もー」」
『…』
道中、何度も止めるために色々言ってきたが…彼女たちは全く引かない。もう仕方ない。覚悟決めろ、[#dn=2#]!
『た、ただいまー…』
「おゥ、思ったより早かったん……」
「「「キャーッ!!!」」」
笑顔で出迎えてくれたトシを見て、友達は発狂した。トシは突然の事態に目を丸くしている。そんな中、彼女たちのテンションは上がりっぱなしだ。
「[#dn=2#]!こんな素敵な人と付き合ってるなら、さっさと紹介しなさいよ!!」
「そうよ、水くさい!」
『え?いや違っ…』
これじゃまるで、私がトシを【彼氏】として紹介してるみたいじゃない!!そんな図々しい女に思われたくなくて、反論しようと思ったら…なんとトシが口を開いた。
「[#dn=2#]のお友達ですか、いつも[#dn=2#]が世話になってます」
『え…』
「俺は土方十四郎。これからも[#dn=2#]と仲良くしてやってください」
「あ、はい…」
「喜んで…」
友達はトシの優しさにメロメロだ…まあ一番メロメロなのは私だけど。
「邪魔しちゃ悪いから!」とか言いつつそそくさと帰っていく友を見送って、部屋に戻った。
『トシ、さっきの…』
「あー…久しぶりに丁寧語喋ったわ」
そう言って笑うトシは、物凄くカッコよかった。
『どーしてあんなことを?』
「いや、アイツら俺を[#dn=2#]の彼氏だと思ってたみたいだし…[#dn=2#]を守るってのが、俺の役目だしな」
『トシ…』
優しいんだね、トシ。
一瞬でもトシが私の彼氏になったみたいで、とても嬉しかった。
「それに、一瞬でも[#dn=2#]の彼氏になって…」
『え、何か言った?』
「…いや、何でもない」
ただ彼氏気取りなトシくんが書きたかっただけの第二話。
せっかくお互いに相手が好きだと気付いたのに、2人の間の壁は大きすぎる。
2008.3.19 愛紗