お揃いの指輪
『やばいいい!』
トシが一緒にデパートに行ったときに利用した駅を覚えているとのことだったので、そこで待ち合わせをすることになり、到着予定時間を連絡したんだけど…私は初歩的なミスを犯した。そう、電車に乗り遅れたのだ!!次々来る各駅停車じゃもっと遅くなると思って、20分後に来た快速で待ち合わせの駅に向かったんだけれど…更に悪いことに、携帯の充電が切れた。遅れることも連絡出来ず、泣きそうになりながら目的の駅で下車。トシを探してキョロキョロしながら歩いていると、壁に寄り掛かって携帯を見つめて動かない彼を見付けた。
『トシ!ゴメン遅くなっちゃ…「[#dn=2#]っ!!」
トシに声を掛けて駆け寄ると、バッと顔をあげて私をギュウッと抱き締めた。え?ちょ、待っ…何コレ恥ずかしいいい!!
トシの突然の行動にカチーンと硬直してしまった私をゆっくりと離して、トシは安堵のため息をはいた。
「お前っ、連絡くらいしろよな…心配しただろ!!」
『ご、ごめっ…充電切れちゃって……』
私の発言に驚いていたトシに、えへへ…と笑ってこのミスを何とか誤魔化そうとしたら、トシはプッと吹き出した。
「どんくさいな、お前」
『か、返す言葉もございません』
自分のマヌケさに情けなくなってじっと俯いていたら、頭の上から「ホラ」という声がした。それに反応して顔をあげれば、照れ臭そうに左手を差し出したトシの姿が。
「俺は[#dn=2#]の彼氏なんだから、手ェくらい握ってもいいだろ…?」
『トシ…』
だんだん赤くなっていくトシにつられて、私まで顔が火照る。差し出されたトシの手をそっと握って、私たちは駅を後にした。トシの手は、あたたかくて大きくて…繋いでるだけで安心出来るものだった。