出会いは突然
『どうぞ…』
とりあえず冷蔵庫に入っていた麦茶を出して、自分は土方さん(…らしき人)の正面に座った。
『あ、私の名前は[#dn=1#][#dn=2#]っていいます!』
沈黙に耐えられなかった私は、名前を名乗っておくことにした。だって、彼の名前も確認したいし。
「あ、俺は…『土方十四郎さん…ですよね?』……え?」
私が彼の名前を言うと、すごく驚いていた。そりゃそうか……やっぱり銀魂の土方さんなんだ。
『あのですね、非常に言い難いんですけど…』
こういうときって、『あなたはマンガのキャラクターです』って言うべきなのかな…?うわーもうちょっと夢小説を勉強しとけばよかった!
でも私はいつか絶対にポロッと言っちゃうだろうし、あとからバレるんだったら今言っちゃう方がいいよね…!
『あなたはマンガのキャラクターなんですっ…!』
「…ハァ?」
ああっ、想像通りの反応!
でも負けちゃダメよ[#dn=2#]、ここで負けたらただの変人になっちゃう!
サッと立ち上がって本棚から銀魂全巻と…ファンブックもオマケにつけてテーブルの上にドンッと置いた。
『これを全部読めば、わかりますから…!!』
あれから3時間後、まだ土方さんはマンガを読み続けている。私はというと、何もすることがないので終始ソワソワしっぱなしだ。
土方さんはたまに「あー…」とか「こんなことまで」とか、声を上げていた。
それからまたしばらくして、ようやく全部読み終わったらしい。
「あー…確かにこのマンガの奴は俺だ。それは認める」
『よかった…』
「でも、何で俺はココに?ココは俺たちの住む江戸じゃないんだろ?」
『東京、ですね……異世界だと思ってもらって構わないかと』
「異世界…何で来ちまったんだ……」
『ココに来る前、何してたんですか?』
「…確か総悟を追いかけてて…そしたらいきなり地面に穴が開いて、ソコに落ちてきたんだ」
そう言ってうちのベランダを指差す土方さん。そうだったんだ…。けれども未だ原因は不明で、どうやったら帰れるのか分からなかった。
ふと時計を見ればもう12時をすぎていて、朝食を食べ損なったことに気付いた。
『あ、もうお昼…ちょっと待っててください、何か作りますから』
「え、あ…悪ィな」
『気にしないでください!』
冷蔵庫の有り合わせで作った食事を、土方さんは「美味い」と言って食べてくれた。ただそれだけのことなのに、物凄く嬉しかった。
『さて、』
食事を終えた私たちは、今後の事について話し合うことにした。
『どうしましょうか。私としてはココにいてもらっても構いませんが』
「いや、そこまで世話になるわけには…」
『でも…帰る所ないんでしょう?私は独り暮らしなんで、気にすることないですよ』
「う、でも…」
『…じゃあ、女の独り暮らしは何かと物騒なので、色々と助けてもらえますか?』
「…そんなんでいいのか?」
意外と(?)ガンコな土方さんを説得する為に適当なことを言ったら、それなら…と納得してくれた。
「世話んなるぜ、[#dn=1#]さん」
『…[#dn=2#]、でいいですよ』
「そうか、じゃあ俺のこともトシでいい。あと敬語もなしな、」
『…うん!よろしくね、トシ!!』