たった2文字
「んん…」
ドライヤーで髪を乾かしていたら、トシが目を擦りながら起き上がったのが見えた。
『トシ、起きたー?』
「…[#dn=2#]……?」
『おはよー』
「今、何時?」
『えっと…8時半くらい』
「やべ、かなり寝たわ…」
くぁ、とアクビをするトシにも、私はドキドキしてしまっている。まともに目が見れないよ…!
「…[#dn=2#]?」
そんな私の異変に気付いたのか、トシは不思議そうに首を傾げていた。やめてくれ。そんな小さな仕草だろうと、今の私には刺激が強すぎるんだから。
私はドライヤーを片付けて、トシから離れたソファーの隅っこに座った。
「なァ[#dn=2#]、もしかして俺…寝言言ってなかったか?」
『ね、寝言!?!?』
トシの一言に必要以上に反応してしまった。ヤバい、これではバレるのも時間の問題だ…。
ゆっくりとこちらに来たトシは、私の隣に腰掛けた。こんな近くにいたら、心臓の音が聞こえちゃうよ…!
ソファーの背もたれに手を回されて、私の体はビクッと反応してしまった。緊張して身体中に力が入る。
「何か、言ってたか…?」
ダメだよトシ。私の大好きな少し掠れた声で、耳元で囁くなんて反則だから。この想いが、止まらなくなっちゃうじゃない…!
「なァ[#dn=2#]『好きっ…』
私の中で何かがプツンとちぎれた。もうどうなっても知らないわ、我慢なんてしない。全部全部、トシが悪いんだから…!
『好き、好きなの…トシのことが好きなのよぉ……!!!』
「[#dn=2#]…」
思っていたことを一気に言って、ハァッと息を吐いた。ダメ、トシの顔は見れそうもない。沈黙に押し潰されて死にそうだ。
私はバッと立ち上がり、急いでトイレに駆け込んで震える手で鍵をかけ、蓋をした便座に体育座りをした。
まだバクバク鳴っている心臓に手を当てて、先程の行動を振り返ってみた。
『言っちゃった、よ…』
あんなに大胆に告白出来るなんて、自分でも驚きだ。返事を聞かずに逃げちゃったけど、コレでよかったんだと思う。私たちは違う世界の人間なんだから、絶対に結ばれることはない。だから、返事なんて要らないんだ。例えさっきの寝言が私に向けたものだったとしても、それは忽ち意味を成さなくなるんだから…。