縮まった距離
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[#dn=2#]が慌ただしく出ていった部屋は…まるで台風一過の後の如く、しんと静まり返っていた。
そんな中、[#dn=2#]が作ってくれた朝食を食べて考えた。
俺は[#dn=2#]が好きだ。本当に、生涯をかけて愛していきたいと思えるほどに。出会ってほんの数日だし、この短期間でこんなに好きになるなんて非常識なのかもしれない。だがそんなことを言ったら、俺がこの世界に来てしまったこと自体が常識外れの出来事だ。
そう、問題はソコだ。俺と[#dn=2#]が同じ世界に生まれてきていれば、何の問題もなかった。第一、こんな世界があったなんて…最近知った事実。
俺は一体、どうしたいんだろうか?帰りたいのか、帰りたくないのか。
…そりゃ帰りたい。真選組(特に近藤さんや総悟)や江戸が心配だ。副長として、無責任に職務放棄は出来ねェ。しかし、[#dn=2#]と離ればなれになるのも嫌だ。いつから俺はこんなに我儘になったんだ?真選組と[#dn=2#]、いつかどっちか選ばねェといけない日が来るのは分かっている。でも今は、今はまだ……考えらんねェ。
大切なものはひとつだけ、ってことなのかも知れねェが…神様っつーもんがいるならば、俺に何でこんなにも酷い試練を与えるのだろうか?こんな苦しい思いをするのなら、最初から[#dn=2#]と出逢わないようにしてくれれば良かった。[#dn=2#]と出逢う運命だったなら……同じ国とまでは言わねェ。せめて同じ世界に存在させてくれりゃあ良かったんだ。
[#dn=2#]に『タバコを吸うならココで!』と言われた窓辺までフラフラと歩いて、懐からタバコとライターを取り出して火をつけた。
そういや、これがこっちに来てから初めて吸うタバコかもしれない。[#dn=2#]の部屋に灰皿はないし、窓辺で吸えって言うくらいだ。きっとタバコが嫌いなんだろう。
タバコの先から灰が落ちそうなのに気が付いて、慌ててポケットから携帯灰皿を取り出した。2丁目のタバコ屋に行ったとき貰った、タバコメーカーの名前が入った小さな携帯灰皿。まさかこんなところで役に立つとは。
最後に息を大きく吸い込んで、タバコの火を消した。いつもと同じタバコのはずなのに、こんなに苦く感じるのは何故だろうか。
究極の選択について、再び考えてみた。例えば俺が[#dn=2#]に告白したとする……ヤベェな、想像しただけで恥ずかしいわ。ま、まァそれはいいとして、フラれた場合(…ほぼ100%の確率でフラれるだろうな、たぶん。)その後が気まずい。フラれたからってすぐに気持ちが変わるわけねェし、江戸に帰れるわけでもねェだろ。
「言わねェ方が、いいな」
普段から女に縁がない俺は、生まれてこのかた告白なんてしたことねェ。そんな俺が[#dn=2#]に告白なんて…無謀なことだろうし、どうすればいいのか自分でも分からん。だが…ずっと黙っておくのも辛ェということだけは、分かった。