正直な気持ち
「ん…」
突然額に訪れたひんやりした感覚に目を開ければ、そこには[#dn=2#]の顔があった。布団に寝ている俺の横に座って、顔を覗き込んでいたらしい。
『あ、ゴメンね。起こしちゃった?』
「いや…」
ひんやりしたものの正体は、昨日俺をかなりてこずらせた冷えピタだった。
しかし俺の記憶によると、冷えピタも昨日使いきってしまって残りはないハズだ。『ちょっと待っててね、』と言って立ち上がった[#dn=2#]の足元を見れば、デパートに行った帰りに通った道にあったコンビニの名前が印刷された白い袋が置いてあった。恐らく俺が寝てる間に買いに行ってくれたんだろうな。
クローゼットの中から、薄いピンクのタオルを取り出した[#dn=2#]は、俺の顔の汗を拭いてくれた。
『ゴメン、たぶん私の風邪が移っちゃったんだよ…』
「…[#dn=2#]が気にすることじゃねーだろ。俺こそ迷惑かけて悪ィな」
『大丈夫、大丈夫。私、看護学科生だよ?これでも実習の成績はいいんだから!』
そう言って優しく微笑む[#dn=2#]は、本当に可愛らしかった。やべェ、俺は相当本気で[#dn=2#]に惚れ込んでいるらしい。
でも分かってるんだ、俺がいくら[#dn=2#]を好きになろうとも……俺たちは結ばれない。たまに[#dn=2#]が見せる、俺に向けた憂いを帯びた瞳が全てを物語っているだろう。いつか俺が、元の世界に戻ってしまうということを。
愛だの恋だの…ただの幻想だと思っていたが、今はちょっと考え方が変わってきてるな。どういう風に?って聞かれたら困るが、ちょっと見方が変わったように思う。
…なんてことを考えながら横になっていたら、[#dn=2#]は『あ!』と短く声を上げて台所へ走っていった。
少しして台所から戻ってきた[#dn=2#]の手にあったのは、昨日俺が使った鍋と小鉢を乗せた盆。[#dn=2#]はそれをテーブルに置いて、鍋の中身を小鉢によそっていた…粥か何かだろう、たぶん。
小鉢からホカホカ上がる湯気に、思わず唾を飲み込んだ。