正直な気持ち



頭にズキリと小さな痛みを感じて目が覚めた。何だ、この感じ…?

ゆっくり目を開けてみれば、ぼんやりと広がる[#dn=2#]の部屋の天井。何度も瞬きをして、目を擦ってみてもぼんやりとしている。
おまけに体を動かすのが物凄くダルい。

自分の体を布団の中でよじらせてみるが、やっぱりダルい。重い腕を布団から出し、そのまま手のひらを額に当てる。


「マジかよ…」


熱い、確実に普段よりも熱い。これは絶対に風邪だ。

以前屯所に風邪が蔓延したときに、特別な対策なしでその危機を乗りきった俺に向かって総悟が発した言葉は、「土方さんはバカだから風邪を引かないんでさァ」というもの。ちなみにその時は総悟も風邪でぶっ倒れた。

俺だって風邪引いたじゃねーか!バカじゃない証拠だ!!

…って一人で優越感に浸っていてるのもバカらしくなって、布団を抜け出し、昨日[#dn=2#]に飲ませた薬の箱を戻した棚を目指した。薬飲んどきゃ治るハズだろ。

しかし棚には薬の空箱しかなく、そう言えば全部飲ませたんだった…と思い出した。

もう仕方ないので寝ることにして、頭痛で目を覚ました時にはまだ暗かった窓から日が差し、[#dn=2#]の目覚まし時計が鳴るまで布団でおとなしくしていたのだが…頭痛がおさまることはなく、むしろどんどん悪化していった。



『…んん、』

モゾモゾしながら、ベッドの上にいる[#dn=2#]が起き上がった。[#dn=2#]に心配かけないように、普通に振る舞おうとしたが、俺の体が言うことを聞いてくれなかった。



『…トシ?起きてるの?』

「……あぁ…」

『大丈夫?何か顔が赤……あ、もしかして…』


そう言って[#dn=2#]は、俺の額に手を当てた。


『やっぱり、熱あるじゃん』

「うぅ…」


俺の薄っぺらい嘘は、すぐにバレてしまった。その瞬間、突然睡魔に襲われた俺は、簡単に眠りに落ちていった。




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