生きる世界、
『…ん』
お粥を食べてからどのくらい経ったのだろう。あの後に薬をのんで、再び眠りについたのだ。
あれがお昼くらいで……壁にかけてある時計を見るともう夕方で、外は日が暮れかけていた。
トシの必死の看病(?)のお陰か、酷かった頭痛はおさまっていた。
ふと左手の違和感に目を向けると、ベッドに突っ伏して眠っているトシの両手で私の左手が包み込まれていた。
その状況を理解して、自然と笑みがこぼれる。
『ずっと、繋いでてくれたんだね…』
トシのサラサラの黒髪に触れる。柔らかくて、心地良い。
ダメだ、これ以上優しくされちゃったら…本当に好きになってしまう。そんなこと、トシにも迷惑だし…何より報われない恋だ。
所詮違う世界の住人、別れなければいけない日が来るだろう。そんなのは嫌だ。それなら初めから、好きにならない方がマシだ…!
今まで必死に自分に言い聞かせてきた。それはこれからも変わらない……トシの手を取って、甲にキスをした。
これが、最初で最後のキスになるだろう。
『ありがとう…』
溢れてきた涙を空いてる右手で拭って、私はゆっくり目を閉じた。
またまた短め;;最後は切ない感じに。
好きなのに、報われない。
好きなのに、伝えられない。
それは何故?運命のいたずら。
2008.3.24 愛紗