出会いは突然



今朝の気分は良好だった。昨日の夜、浮気をしていた彼氏に思いっきりビンタをして(物凄くいい音がした!)別れてきたからだ。さすがに凹むかな~…と思っていたけれど案外元気で、殴った時のアイツの情けない顔を見て、むしろスッキリしていた。
もしかして、私はそんなに彼のことが好きじゃなかったのかもしれない。

ベッドの中でモゾモゾしながら、今日は大学もバイトも休みだから一日中ゆっくりしよう。と思って、再び目を閉じる。
次、付き合うのは…銀魂の、土方さんみたいな……一途な人と………。


そんなことを思い浮かべながら、魅惑の二度寝の世界へ旅立…



ドーン!!!


…とうと思ったら、閑静な住宅街には不釣り合いな大きな音が響いた。思わずガバッと身を起こし、寝巻きのままベランダに出た。
そこには、信じがたい光景が。


「いってェー…」


決して広いとは言えないベランダに尻餅をついている男がいた。
黒い隊服に黒いブーツ、そして腰には一振りの日本刀。短い黒髪に開き気味の瞳孔、口にはタバコをくわえてて……私の知ってる中で、これら全ての項目を満たしている人物はひとりしかいなくて。


『…~!?』



私は声にならないほど驚いて、部屋の中に引っ込んで鍵をかけ、カーテンを閉めた。
え、何コレ…ドッキリ?だってアレ、間違いなく土方十四郎だよね?銀魂の……うん、絶対そう。だって私、土方さん大好きだもん。見間違える訳ない!でも彼はマンガのキャラクターな訳だし、こんなところにいるハズない!!そう、これは夢だわ。さっき土方さんみたいな彼氏が欲しいって念じたから、神様がイタズラしたのよ。きっとそう!

まだドキドキしてる心を落ち着けて、そーっとカーテンを開けて見てみたら…「どーん」という効果音が似合いそうなくらいの迫力で土方さん(らしき人)が仁王立ちしてた。


やっぱりいるゥウゥ!!!


あまりにビックリして…ヘタリとその場に座り込んだら、土方さん(らしき人)は何かを言っていた。
何だろう?と思って、彼の口の動きと微かに聞こえる声を聞けば、どうやらココの鍵を開けろ。ということのようだ。


普通なら彼は不審者だけど(だっていきなりベランダに入ってきたんだもん)、知り合いのよーな違うよーな変な感覚にとらわれた私は、鍵を開けて中に入れてしまった。


「…ココ、お前んちなのか?」

『え?あ、はい…』


…声までアニメの土方さんとソックリなんですけど。
会話が続かなくて部屋の真ん中で立ち尽くしていたら、土方さんが口を開いた。



「っていうか、ココはどこなんだ」



ああ、これはもしかして…夢小説でよくある【逆トリップ】ってやつなんでしょーか…?




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