困ったときこそ究極技
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「たー!」
『てーい!』
「どりゃー!」
それから俺たちは、しばらく取り憑かれたかのようにゲームをしていた。コントローラーを順番に回し、総悟は織田信長(「魔王が天下統一なんて、最高でさァ」らしい)、妃咲は伊達政宗(理由は…まぁ……な!)、俺は色んな武将を操って全国の猛者たちを倒していった。妃咲は兵士たちを駒と称し粗末に扱う毛利元就に激怒し(『実際の毛利元就はもっと立派な人物だよ!』と憤慨していた。)何度も毛利元就のステージでオクラみたいなデザインの彼を倒していた。
『楽しいねー!』
「こーいうゲームの影響で、若い女性の間で戦国時代ブームが起こってるらしいですぜィ」
「まじでか」
こんな…秀吉の信長に対する忠誠心とかそーいうのを全く無視してたり、本多忠勝が完全に変なメカ扱いだったり、前田利家に至っては加賀を治める大名のはずなのにもうただの裸族と化しているようなゲームがキッカケで戦国時代ブームとか…歴史家の人が聞いたら歴史への冒涜だと感じそうだな。いや、俺はこーいうバカなノリのゲーム好きだけども。色んな理由で面白い、戦国BASARA。何かすげーや。
『私は前から歴史好きだったけど…ハマる理由わかるな~!』
「面白いしな、ゲームの内容も」
『ん~…それもあるけど、』
妃咲は持っていたコントローラーを俺に渡し、ぴっと指を立ててこう言った。
『みんなカッコいいもん!特に伊達政宗!!』
にへらと笑って少し頬を赤らめた妃咲は、テレビ画面の中で爽やかに笑っている伊達政宗をうっとりと眺めていた。
「妃咲、浮気ですかィ?」
『ち、違うよっ!』
ニヤつきながらこちらをチラ見して妃咲に尋ねる総悟に憎たらしさを感じながら、妃咲の言葉に若干のショックを感じていた。ゲームのキャラクターにヤキモチ妬くなんてバカだとは思うけど、さすがに目の前で他の男を『カッコいい』なんて形容されて平気でいられるほど、俺には大人の余裕がない。
その感情が物凄く顔に出ていたのだろうか、俺を見た妃咲は酷く焦って弁解してきた。
『あわばばば違うの!伊達政宗は…その……トシくんもテレビでお通ちゃんとか見たら可愛いって思うでしょ?それと一緒で…』
「思わねーよ。俺は妃咲しか可愛いと思えねェ」
『トシくん…』
俺はただ思ったことを述べたまでだが、妃咲は感動したのか涙を拭って俺に謝罪してきた。
『ゴメンねトシくん、私も好きなのはトシくんだけだよ!愚かな私を許して!』
「バカ、最初から怒ってなんかいねーよ」
『ありがとう…優しいんだね』
そう言って妃咲ははにかんだように笑った。そんな妃咲の頭を撫でてやると、えへへと笑い、くすぐったそうに身をよじっていた。
「…お二人さん、俺の存在忘れてやせんか?」
「……お、覚えてたぞ」
『わ、忘れるわけないじゃない』
「そーですかィ。じゃあその滝のような汗はなんなんですかねェ?」
「あ、あっちーなコノヤロー!今年は暖冬だな!!」
『地球温暖化ストップに協力していかないとダメね!』
総悟の冷ややかな目線を浴びながらも、俺たちは奮闘した。その後、総悟は昼寝をするからゲームをやめると言い、妃咲は志村妙から呼ばれたとかで出掛けていった。俺は総悟にゲームを借り、自分の部屋に戻った。目的はただ一つ。
テレビやコンセントを接続し、真っ赤な衣装に身を包んで槍を持ち、戦場に繰り出した。
それから数分後、俺は画面に出てきた文字に満足してほくそ笑んでいた。
《伊達政宗 撃破!》
「はは、ざまーみやがれ!」
ゲームのキャラクターといえど妃咲にカッコいいと言われた奴(伊達政宗)への報復を済ませた俺が、何故カッコいいと言われたかを知ったのは、それからまた何時間か経った後だった。
「なぁ、妃咲は何で伊達政宗をカッコいいと思ったんだ?」
『え、そんなの決まってるじゃない!トシくんと似た声だからだよ!』
連載第二十四話。
結局またバカップルオチwww
2009.2.14 春日愛紗