困ったときこそ究極技
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『トシくん、早く早く!』
市中の見廻りを終えて(同時に今日の仕事も終わってしまった。まだ午後3時なのに…)屯所に戻ると、それを待ち構えていたかのように妃咲が出迎えてくれた。俺を見つけて嬉しそうに近寄ってきた妃咲は『トシくんに見せたいものがあるの!』と言って俺の手に指を絡ませ、廊下を小走りで進んだ。俺は妃咲と手を繋いでるだけでドキドキして、心臓が破裂するんじゃねーかと思った。
「ちょ、そんな急ぐなよ…何があるんだ?」
『えへへ、秘密~!』
そう言ってニカッと笑った妃咲が可愛すぎて、無性に抱き締めたくなった!オタクたちの言う「萌え」という感情がすごくよくわかった。心の奥底から込み上げてくる感情…これが萌えか!
『さ、入って!』
「ここ…」
到着したのは総悟の部屋だった。アイツはまた何かくだらねーこと考えてんじゃねーだろうな?若干総悟のイタズラを疑ったが、妃咲に促されて部屋に入った。中にはプレステのコントローラーを持った総悟が座っていた。
「いらっしゃい、土方さん」
「…仕事中に何やってんだ?」
「仕事中ったって暇すぎるんでさァ。片付けなきゃなんてェ書類ももうないですぜィ」
『仕事が出来たらすぐそっちやるから!』
ね?と俺の目の前で手を握ったまま妃咲に上目遣いで懇願されちゃ、俺の頭の中の選択肢に「ダメだ」なんてものは存在しなくなってしまう。もうお前自分が可愛いってわかっててやってんだろ!わざとなんだろう!わざとでも構わん!
くっ、と妃咲のあまりの可愛さに失いかけた自我を必死に保ち、テレビ画面の正面に座った。
『ささ、トシくんもやろうよ!』
「俺マリオくらいしかやったことねーんだけど」
「大丈夫でさァ、ぷよぷよとかしかやったことねェ妃咲でも出来たんですから」
『ちょ、総悟それ私のことバカにしてるでしょ!』
「おっとすいやせん」
『む!さっきのは本気で私をバカにしてたのね!』
キッと総悟を睨む妃咲に対し、総悟の方は飄々とした態度でケラケラ笑っていた。何だこの疎外感!おもしろくねー!
…などと考えていたら、そんな俺に気付いたのか妃咲が慌てて説明し出した。
『あのね、このボタンが攻撃でこのボタンがジャンプ!それで~…』
ボタンについての大方の説明をしたあと、妃咲は『絶対面白いから!』と満面の笑みで言っていた。妃咲がそこまで言うんだ。やらないわけにもいかねェな。自分のキャラクターを選ぼうとすると、妃咲が『伊達政宗がいいよ、伊達政宗!』と妙に伊達政宗を推してきた。何でだ?確かに強そうだが…ま、何でもいいか。方向キーで伊達政宗を選び、決定ボタンを押した。アイテムやら武器やら装備するらしいが、如何せんよくわからんので総悟が選んだものをつけておいた。そしていよいよ、戦闘開始。
《せっかくのパーリィだ、派手に楽しめよ?》
テレビから聞こえてきた声に、妃咲は『きゃああ!』と言って目を輝かせていた。総悟はニヤニヤ笑っていた。何なんだ?
『…あれ?無反応』
「何がだ?」
「こりゃアレでさァ。自分に聞こえる自分の声と、人に聞こえる自分の声が違うってやつ」
『え~…残念』
俺は寄ってきた敵をボタンを連打し倒していたが、妃咲はあからさまにしょぼんとした表情だった。だから何で!?誰かこの状況を説明してくれ!!
わけもわからず攻撃を続けていたら、妃咲が突然『そうだ!』と声をあげて隊服のポケットをゴソゴソ探り始めた。
『トシくんトシくん!私のケータイに向かって、さっき伊達政宗が言ったセリフ言ってみて?』
「…何で?」
『いーから!』
妃咲の行動は意味不明だったが特に断る理由もねーし、ゲームを一時中断してゴホンと咳払いをし、ケータイに向かって言った。
「せ、せっかくのパーリィだ、派手に楽しめよ?」
言い終わるとケータイからピロンという音がしたので、どうやら録音していたようだ。妃咲は楽しそうにそのケータイのスピーカーを俺の方に向けて、『よーく聞いといてね!』と言って再生ボタンを押した。聞こえてきた声は、さっきの伊達政宗とそっくりな声だった。
「…これ、俺?」
『似てるでしょ!伊達政宗とトシくんの声!』
「それを聞かせたくて土方さんを呼んだんでィ」
そーいうことだったのか、だから妃咲が伊達政宗を推してきた、と。
俺と似たような声で《YEAH!》などと恥ずかしげもなく叫ぶ伊達政宗を操って、俺は徳川家康を倒した。そしてさっき録音した俺の(伊達政宗の)セリフを妃咲が保存したのを見てしまった。ちょっと嬉しかった。