聖夜が為にいざ参る
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『よし!』
私は掃除機の柄の部分を肩に担ぎ、本体部分を左の脇に抱えて立っていた。クジ引きの結果、零番隊は全部屋の掃除機・ホウキ掃きの担当になった。駿ちゃんがホウキ、まーくんがチリトリを持って3人で円陣を組んで気合いを入れた。
『まずは隊士の部屋に行こう!』
「了解っす!」
「…ぎゃあああ!」
廊下を歩いていると、突然まーくんが叫び声をあげた。何事かと振り向けば、障子から手が飛び出していた。どうやらまーくんはその手に殴られかけたらしい。
『大丈夫、まーくん!?』
「な、何とか…」
「敵の奇襲か!?」
私と駿ちゃんは尻餅をついたまーくんを庇うように立って、掃除機とホウキを構えた。じり、と間合いを詰めると、部屋の中から「ち、ちょっと待って!」と聞き覚えのある声がした。
「俺だよ、俺!」
『あ、ザキくん…』
ヒョコッと現れたのはザキくん。どうやら障子の張り替え担当になっていたみたいだ。
「ゴメン、驚かせちゃった?」
「あ、大丈夫です…」
『ザキくん、障子係になったんだね』
「大変そうですね、全部の部屋の張り替えでしょう?」
ザキくんたち監察部隊が、「えい、えい!」と言いながら障子を破く姿を見て駿ちゃんが声をかけると、ザキくんはカッと目を見開いて語り出した。
「いいかい、障子の張り替えってのは「大変」なんて言葉で語り尽くせるほど簡単なものじゃないんだ!」
「は、はぁ…」
「まず破く作業。これは一見簡単に見えるが、実は奥が深いんだ。何も考えずに破いてるように見えるだろう?」
『…そうね、』
「それが違うんだ。新しく張る障子のために、微妙な剥がし残しさえ許されないんだ」
「へぇ…」
「そしていざ張る場面、一筋のシワさえ許されない。ここは根気が必要だ。地道な作業、それに耐えうる強い気持ちと…」
『…行こう』
思ったよりも長く語られたので、私たちはこっそり抜け出した。監察部隊のみんなは、すごく目を輝かせて障子を破いていた。
いくつかの部屋を掃除した後、私たちは自らの部屋の隅っこで体育座りをしている総悟を発見した。
『ちょ、総悟。何してんの?』
「ほっといてくだせェ。どうせ俺には廁掃除がお似合いなんでさァ」
総悟はスネていた。そんなに廁掃除が嫌だったのかな?3人で必死に慰めたけど、総悟は「先祖が廁ぶっ壊したとかで呪われてんでしょうかねィ…」とぶつぶつ呟いていた。私たちがどうしようかと困っていたところ「隊長ォォォ!」と叫びながら、一番隊のみんなが飛び込んできた。
「やっぱ、隊長無しで廁掃除なんて無理っす!」
「隊長、戻ってきてください!」
「一緒にやりましょうよ!」
「お前ら…」
総悟は一瞬ポカンとしていたが、ズビッと鼻を鳴らして立ち上がり目元を赤く腫らして、でも全力の笑顔でこう言った。
「オメーら、便器ピッカピカに磨きあげるぞォォ!」
「「おおおお!」」
私は、涙で前が見えなかった。よかったね総悟。あなたの周りには、こんな素敵な仲間たちがいて…!
「なぁ、駿ちゃん」
「何、まーくん?」
「これ何て青春ドラマ?」
「…侍魂~男達のカワヤ~」
「何ソレ…でもそれっぽいね」