聖夜が為にいざ参る
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『ふふっ』
「ん、どうした?」
今年も末になり、寒さもますます厳しさを増してきた。私は自分のはく息で指先を暖めながら、トシくんと見廻りを続けていた。確かに体は冷えていたが、心はポッカポカだ!何でってそりゃ、トシくんと素敵なクリスマスをすごしたから…!思い出しただけで恥ずかしくて照れちゃうけど、すごい幸せだったなぁ…。
思わず溢れた笑いを疑問に思ったのか、トシくんは不思議そうに私を見た。
私はごそごそと襟元を漁り、『コレ!』と言ってトシくんに貰ったネックレスのチャーム部分を取り出した。
「仕事中もつけてんのか?」
『うん!肌身離さず持ってたいから。そうしたら、いつもトシくんと一緒にいるみたいでしょう?』
「妃咲…!」
『トシくん…!』
お互いの手を取り合って見つめ合い、道のど真ん中で2人の世界に入っていたら「あのー…」と遠慮がちに声をかけられた。いけない、職務中だった!
パッと手を離してそちらに振り向けば、立っていたのは新八くんと神楽ちゃん。両手に買い物袋を抱えているところを見ると、恐らく年末の買い出しに駆り出されたのだろう。2人で色違いのマフラーをしていて、とても微笑ましかった。
『あ、新八くんに神楽ちゃん!』
「こんにちは、見廻りご苦労様です」
「税金の分しっかり働けヨ、怪人マヨラー」
「怪人じゃねェ、確かにマヨラーだけども」
トシくんが神楽ちゃんをポカッと軽く殴り、神楽ちゃんは反撃しようと素早く飛び蹴りをした。それをサッとしゃがんで避けたトシくんのせいで、新八くんにその被害が及んだ。新八くんはかなりの距離を吹っ飛んで、私が『新八くん!!』と駆け寄るとヨロヨロとしながら起き上がった。
『大丈夫?!』
「はは、いつものことですから」
「こんなことでケガしてちゃ、万事屋メンバーは務まらないアル」
「どんだけハードな日常を送ってるんだ、お前ら」
ズレたメガネを苦笑いしながら直した新八くんは、何かに気付いたように「あれ?」と声を上げた。
「土方さん、腕時計なんかしてましたっけ?」
トシくんの方を向くと、ポケットから取り出したタバコを持っていた左手の手首には、私がプレゼントした時計がつけられていた。私はそれを見てつい微笑んでしまった。
「まーな。カッコいいだろ」
「ええ、似合ってますよ」
新八くんにそう言われ、トシくんはこっちをチラッと見て嬉しそうに微笑んだ。やばい、そんな表情されたら私…もう心臓がもたない!
『殺される~…』
「ん、誰にアルか!?」
『…あ、何でもないのよ、神楽ちゃん!それよりも2人で買い物?』
つい声に出して呟いてしまった気恥ずかしさを誤魔化すために、私は声を裏返らせながら神楽ちゃんに質問した。神楽ちゃんは「おぉ!」と何かを思い出したようにポンと手を打った。
「新八、そろそろ帰らないと銀ちゃんが寂しがるアル」
「寂しがる歳じゃねーだろうが」
「お前は知らねーかもしれねーがなァ、銀ちゃんは意外と寂しがり屋アル!」
「いや神楽ちゃん、こんな往来の真ん中でそんなこと叫ばなくても」
がるるる!と唸る神楽ちゃんは、「大掃除の道具を買いに来たんです」と言う新八くんに引きずられながら万事屋に帰っていった。
『大掃除…?』
「…って、言ってたな」
『私たち、してないよね?』
「そうだな」
私たちは顔を見合わせて、同時に屯所に向かってダッシュした。
23*年の夜、怒濤の煤払い