聖夜が為にいざ参る
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私はショックのあまり、今何を言われたのがしばらく理解できずにいた。え?何だって?真選組でクリスマスパーティー?
…うそでしょ!?
だってクリスマスといえばさぁ、キリスト教徒じゃない私たちにとっては単なる恋人同士のイチャつく日なんじゃないの?あれじゃん、普段はちょっと恥ずかしいけど、この日だけは街や周囲の雰囲気でいつもよりもイチャイチャできるじゃん!乙女の抱く小さな夢じゃん!だからいつも立ち読みで済ます雑誌を買ってさぁ、イルミネーションの綺麗な場所も調べてさぁ、新しい着物も買ったのにさぁ……!
『ちくしょおおおう!』
悶々と考え込んでいた私が畳に拳を叩きつけて急に叫んだので、勲さんもトシくんも驚いていた。ちなみにその時トシくんは勲さんの胸ぐらを掴んでガクガク揺すっている最中だった。
「俺はクリスマス、妃咲と過ごすんだ」
「…そうか、恋人同士だもんな、トシと妃咲ちゃんは」
あ、やばい今の勲さんの言葉に頬が緩んだ。いかんいかん、引き締めなければ!
「もしアレだったら参加しなくてもいいぞ!本当は隊士全員でやりたかったんだけど…仕方ないよな」
『勲さん…』
ごめんね、邪魔して。とすまなさそうに一言残して踵を返した勲さんのポケットから【クリスマス★パーリィーー!のしおり】と書かれた紙がチラッと見えた。
きっと勲さん、何日も前から一人でコッソリ準備してたんだろうなぁ…サプライズパーティーとか好きそうだし。
そんないつも一生懸命勲さんのことを思うと、自分達のことしか考えてなかったことに胸が痛くなり、トシくんの方をチラッと見た瞬間、目が合った。
あ、きっと同じこと考えてるなぁ…と直感で判断した私は、『勲さん、喜ぶよ』と言って微笑んだ。するとトシくんも微笑んで「そーだな」と言って立ち上がった。目的はもちろん、勲さんに私たちのパーティー参加を伝えるため。
そうだ。クリスマスの夜は確かに特別だけど、絶対その日にデートしなきゃいけない訳じゃない。次の日だってその次の日だって、私にとってはトシくんさえいれば毎日特別なんだよ。
「あ、妃咲」
勲さんと話をするため、部屋を出ようとしていたトシくんは廊下に一歩出たところで立ち止まった。私は理由がわからなくて小首をかしげた。
「続き、今度するからな」
そう言ってニヤリと笑ったトシくんは、スッと廊下を歩いていってしまった。
…続き?何の……と考えようとしたが、それはすぐに解決した。勲さんの爆弾発言で一瞬頭から抜けちゃってたけど、その前トシくんと私は……うん、アレだよねアレ。ちょ、単語を思い浮かべただけで恥ずかしいけど…なんだ、接吻?……いやいやこっちの方がなんか生々しくて嫌だ!うん、キ、キスだよね、うん…。
あの時はすごく驚いたけど、私達だって付き合い始めて結構経つ。してもいい、とは思うんだけど…やっぱこれにはこの先もずっと慣れない気がする。恥ずかしいもん。
未遂の行為を思い出しただけで、顔が火照るのを感じる。それに、「続きを今度する」って……!言葉が頭の中で響いた瞬間、私の顔がますます赤くなった。そして足に力が入らなくて、その場にしばらく座っていた。