聖夜が為にいざ参る
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『…あっ、トシくんトシくん!』
ある日の昼下がり、妃咲と一緒に俺の部屋で休憩していると、何かを思い出したような妃咲はなぜかとても浮かれて俺に話しかけてきた。すごく可愛かった。俺の気のせいかもしれないが、最近妃咲の可愛さに更に磨きがかかってきたような気がする。くそ、絶対敵増えるじゃねーか…!
本当はすごくドキドキしていたが、俺はそれを隠すように平静を装って返事をした。
「どうした妃咲、そんなにニコニコして」
『ふふふ~!何ででしょう?』
「何だよ、教えろよ~」
『当ててみて~!』
満面の笑みでそう言って、上目使いで俺を見つめてくる妃咲。やめろォォ!色々と我慢できなくなるだろォォォ!
わかんねーよと困っている俺を見てクスクス笑っている妃咲に更に胸が高鳴るのを感じながら、連続でこんな可愛らしい仕草をするなんてわざとなんじゃないかと疑ってみた。いや、もうわざとでもいい!妃咲になら何されてもいい!
…と、自分を少し気持ち悪く感じつつも妃咲の問いの答えが本当にわからなかったので、降参して聞いてみることにした。
「マジでわかんねーよ、教えてくれねェか?」
『仕方ないなぁ、あのね~…』
机を挟んで俺の正面に座っていた妃咲は、そう言いながら隣に移動してきた。え、何!?何が始まるんだ!
『もうすぐ、クリスマスだよ!』
その言葉を聞いて「何だそんなことか」と思ったが、よく考えてみると妃咲と俺は恋人同士。となるとやはりクリスマスとは特別なものだろう。やべ、テンション上がってきた。そうか、恋人とクリスマス…!
「そうだったな、どっか行きたいとことかあるか?」
『あのね、夜景見たい!雑誌に色々スポットが載ってて~!』
懐から雑誌を取り出した妃咲は、本当に嬉しそうに語り出した。
『トシくんとクリスマス過ごすの、今から楽しみ!』
当日の大体の予定を決めると、妃咲は頬を赤らめてニッコリ微笑んだ。もう確実に確信犯ですよねコレ。いいですいいです確信犯で。
手を広げ、小さな声で「おいで」と言うと、妃咲は小動物みたいにチョコチョコと寄ってきて、俺の胸にすっぽり収まった。畜生、可愛いなコノヤロー。
そのままぎゅっと抱き締めると、「ああこれが幸せってもんか」と改めて実感した。
チラッと妃咲の方を見れば、妃咲はゆっくりと俺の背中に腕を回して幸せそうに笑っていた。
やばい。このまま死にそうな気がする、俺。
そこで俺は決意して、少し体を離し緊張のせいか掠れてしまった声で「妃咲」と名前を呼んだ。すると妃咲はゆっくりと顔を上げて俺を見つめた。
行け、俺!と心の中で決心をして徐々に顔を近付けていけば、これから何をするのか理解したのであろう妃咲の顔は一気に赤くなって目を見開いていたが、直後そっと目を閉じた。
よし!今日こそイケる…!
「トシー!妃咲ちゃーん!いるかー!?」
すぱーん!と豪快な音を立てて、俺たちの名前を呼びながら障子が開いた。立っていたのは近藤さん。ちくしょおお!タイミング悪すぎだろうがよォォォ!!
俺たちはひどく驚いた。そして近藤さんに見られた!と思ったのであろう妃咲は、恥ずかしさのあまりか俺の後ろに隠れた。
俺はそんな妃咲の恥じらいにもトキメキを感じたが、それよりも近藤さんに対する怒りがハンパなかった。だって考えてもみろよ!俺だってもう若くねェ、恋愛に対して多少焦りが出るもんだろうが!でも妃咲のことは傷付けたくないし、大事にしたい。それに妃咲に嫌われたら一貫の終わりだ。だから我慢して我慢して、ようやくたどり着いた到達点だったのに…!
「一体何なんだよ近藤さん!くだらねー用事だったらキレるぞ!!」
「ええええもう既にキレてるじゃんかァァ!それにくだらなくねーよ!」
「なら言ってみろやァァ!」
『トシくん落ち着いて!』
俺のあまりの剣幕に涙目になっていた近藤さんは、ゆっくりと口を開いて最悪な事実を伝えた。
「…真選組クリスマスパーリィー!イェェイ!」
その言葉を聞いて俺たちがポカンとしたのは、もはや言うまでもない。
22*聖夜が為にいざ参る