行け、芋掘り隊!
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『只今戻りましたー』
「妃咲ァァ[#dn=3 #]!」
『ぎゃあ!ビックリした…どうしたのトシくん』
「どうしたのじゃねーだろ!」
銀ちゃんたちと別れて真っ直ぐ屯所に戻った私は、物凄い勢いで走ってきたトシくんに怒られた。何で?!だって私の今日の仕事は早朝の見廻り当番だけだったはず…仕事はサボってない!
「急にいなくなるから心配したじゃねーか!どこ行ったか近藤さんに聞いても、わかんねーって言うしよォ…」
『……心配…してくれてたんだ』
「ハァ?当たり前だろ、もし妃咲の身に何かあったらどーすんだ、俺は生きていけねェ!」
『トシくん…!』
「妃咲…!」
うっとりとトシくんの顔を見つめていると、いつの間にか玄関に来ていた勲さんに声をかけられた。ゴメンなさい勲さん、全く気付きませんでした。
「妃咲ちゃん、どこ行ってたんだい?」
『…あ、そうそう!』
勲さんの質問に大切なことを思い出した私は、足元に置いてあった大きな袋を持ち上げた。お、重い…!
『これ…!』
「何だ?」
そう言ってトシくんは私からヒョイと袋を取り上げた。すごい軽々と持ってる。結構重量あるはずなのに…すごいなぁ、かっこいい…!
「サツマイモ…」
『そうなの!実はさっき芋掘りに行ってきて、お礼に貰ったんだ』
「芋掘りって…何で?」
『やだなぁ、忘れちゃったんですか?みんなで焼き芋したいねって話してたじゃないですか、だからサツマイモ調達してきたんです!』
「んなもんそこらへんの八百屋で買ってくれば…」
『だって、そんな余分な経費なんてないでしょ?だから私が掘って…』
やっぱ無断で行ってきたのがダメだったのかな。だんだん小さくなる声に合わせて下を向いていると、「よし」というトシくんの声が聞こえた。その声に反応して顔をあげると、トシくんは私の頭にポンと手を置いて、優しく微笑んでくれた。
「するか、焼き芋!」
「そうだな、せっかく妃咲ちゃんが掘ってきてくれたんだし」
その言葉に嬉しくなった私が『はいっ!』と元気よく返事をすると、何かに気付いたトシくんは短く叫び声を上げ、「落ち葉の用意を頼んどいてくれ」と勲さんに一言残して私の手を引っ張り、ズンズンと廊下を進んだ。
『ト、トシくん!どうしたの?』
「いーから来い!」
訳の分からぬまま引っ張られて着いたのは、洗面所。着いてもなお疑問は解決されずにポカンとしていたら、握られた手に水がかけられた。
『冷た!』
「我慢しろ。ったく…せっかく綺麗な指なんだから、もっと大事にしろよ」
『指…?』
そう言われて自分の指を見ると、間接の部分や爪の間などに細かい泥が残っていた。そっか、畑の手洗い場が屋外で寒かったから、適当に洗って終わったんだった…。
それよりも「綺麗な指」と言われたことに対して、恥ずかしいけど嬉しいといった感情が浮かんで来て、自分の顔が赤くなるのを感じた。
冷静になれ、妃咲!と自分に言い聞かせていたが、それはトシくんの突然の行動によって阻まれた。
なんとトシくんは両手で石鹸を泡立てた後、私の手を掴んで洗い始めたのだ!ひぃぃぃ心臓が破裂するぅぅ!
『ちょっとトシくんンン!じじじ自分で洗えるって!!』
「ダメだ、お前どうせまたいい加減に洗うだろ」
『あ、洗わないよ!』
「黙ってろ、すぐ終わる」
トシくんの真剣な表情の横顔を見てこれ以上抵抗するのをやめた私は、丁寧に手を洗ってくれるトシくんの愛をひしひしと感じていた。ああ、幸せ!
その後の焼き芋大会では勲さんと総悟が大きい芋を取り合って取っ組み合いになったり、「妃咲隊長の掘った芋…!」となぜか泣きながら食べる駿ちゃんとまーくんがいたり…と、とても楽しい時間になった。そして私は思った、みんなでいれば寒さなんてヘッチャラだ!
…特に私の場合は、トシくんといれば心も体もポカポカです!トシくんもそう思ってくれてたらいいな…!
連載第二十一話。
ヒロインがあまりに一筋すぎて、銀さんが可哀想;;
2008.12.10 春日愛紗