風邪は万病の元
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『…んー?』
目を開けると、視界いっぱいに自分の部屋の天井が目に入った。あれ、私どうしたんだっけ?確か零番隊で見回りしてて…。
うっすらと目を開けたままぼんやりする頭で考えていると、横から声が聞こえた。
「あ、妃咲ちゃん気が付いた!」
「マジですかィ?」
その声がした方を見ると、心配そうに私を覗き込む勲さんと総悟がいた。
「妃咲ちゃん、大丈夫?」
「苦しくねーですかィ?」
『勲、さん?総悟……何が?』
起き上がろうと体を動かすと「動いちゃダメ、寝といて!」と勲さんに制された。何が何だかわからないまま寝かされ、ポカンとした顔で2人を見つめた。
「妃咲、屯所に帰ってくる途中でぶっ倒れたんでさァ。柏木と葉山がびーびー泣きながら運んできたんですぜィ?」
「2人とも「妃咲隊長が死んじゃう!」ってもう大騒ぎ!医者を呼んで診てもらったけど、ただの風邪だそうだ」
『風邪…』
「妃咲ちゃん昨日雨に降られた時、よく乾かさなかったろ」
『…あ』
そういえば昨日見回りから帰ってきた時、隊士のみんなで毎週観ているドラマ「花より男の子」の放送開始に間に合わなさそうで焦ってたんだっけ…。
「妃咲ー!始まるぞー」
『わわっ、待って!』
「ありえねーっつーの!」
『わー!もう始まってる!?』
「今週は主人公とライバルの血みどろバトルでさァ」
『うそ!』
「んなわけあるかァァァ!」
そんで適当に乾かして観に行ったから、それで風邪引いたのかな…?そうだとしたらバカじゃん私。ドラマ観たくていい加減に乾かして風邪でぶっ倒れた?ちょー恥ずかしい!!
『…うう、スミマセン。迷惑かけて…』
「誰も迷惑なんて思っちゃいないさ!でも…」
「…ですよねィ」
『え?でも、何…?』
急に口ごもり、目を見合わせて苦笑いをした勲さんと総悟を見て私は不安になった。
彼らの次の言葉を待っていると、玄関の方から何やら騒がしい声が聞こえた。
「トシが、さぁ…見回りだったんだよね。さっきまで」
トシくん?あ、そういえば私たちとは別ブロックの見回りを割り当てられていたような…。
「はは、来やしたぜ…」
呆れたような顔をして廊下の方に目を向ける総悟の視線を追って廊下の方を見ると、凄い勢いの足音がこの部屋に近付いてくるのが聞こえた。何だろう、と考える暇もなくスパンと開かれた障子から入ってきたのは、物凄い形相をしたトシくんだった。
『トシく、ん…』
「妃咲ァァァァァ!!」
トシくんがあまりにも大声を出すので、私も勲さんたちもギョッとした。あの声、屯所中に響いたんじゃないかと思う。「コラ、トシ!病人の前だぞ」とたしなめた勲さんの言葉に、トシくんは「おおおおう!」とどもりながら返事をして枕元に座った。
「こここ近藤さん!妃咲は…」
「ああ、ただの風邪だそうだ」
「…本当か?」
「へ?」
「本当にただの風邪なんだろうなァァァ!?」
「ひいいい!い、医者がそう言って…」
トシくんは凄い剣幕で勲さんに掴みかかり、ガクガクと揺すっていた。だ、大丈夫なのかな勲さん…。
トシくんは突然のパッと手を離して(勲さんはゆっくり総悟の方へ倒れ、総悟が一生懸命支えていた)何かブツブツ呟いていた。
「もし診察ミスだったら承知しねェぞ…」
『トシくん。私、大丈夫だよ?』
「ああ妃咲!ツラいだろ、ゆっくり休め。な?何か欲しいもんあるか?水分摂ったか?」
すごく心配しているトシくんを目の当たりにして、さっきの勲さんたちの態度の理由がわかった。トシくんて、かなり心配性なんだな…心配かけちゃって悪いなぁ、と思うけど。でも、嬉しい!しんどいのは相変わらずだけど、幸せを感じた私は布団の中でふふっと笑った。