オタクの何が悪い!
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この時間になってはもう銭湯も閉まっているということで、俺が見張りに立ち妃咲は屯所の大浴場に入ることになった。
ざざぁ、とたまに聞こえる湯の音に耳を傾け妃咲が溺れてねェことを確かめ(だってあれは妃咲だけどヘタレたオタクだ。何かどんくさそうだし心配なんだ)今後のことについて考えていた。
俺の時はなんとか大丈夫だったが、もしも妃咲がずっとこのままだったらどうする?俺は今までと同じように妃咲を愛していけるのか?
俺は妃咲の中身に惚れたんだ、いや、最初は確かに可愛い顔立ちだと思ったけども!惚れたのは中身!
けど、今や妃咲は外見こそ一緒だが中身は全くの別人。そんな妃咲を、この先ずっと見ていられるのか?
吸っていたタバコが短くなったので携帯灰皿に押し付け、新しくタバコに火をつけた。大きく息を吸い込み、フーと強く煙を吐き出した。
さっきも思ったが、やっぱり妃咲は妃咲。帰ってくるのを信じて待ってやらねェとダメだ。俺が最初に諦めてどーする、最後まで妃咲を守ってくって自分で決めたんだろ。
「待ってろよ、妃咲…」
絶対、本当の妃咲に戻してやる。例え何日、何ヵ月、何年かかったとしても俺ァ待ってるからよ。
自分の中で気持ちの整理がつき、決意を固めていると大浴場の戸がガララと音を立てて開き、『待たせてしまって申し訳ない、土方氏!』と言いながら妃咲が出てきた。
俺はまだ長かったタバコを携帯灰皿に押し付け、それを懐にしまった。
『…もう吸わないのかね?』
「あぁ。妃咲の髪、臭くなっちまうだろ」
早く乾かせよ、と声をかけて妃咲の頭をポンポンと撫で、先に歩いて自室に戻ろうとしたら後ろから妃咲が声をかけた。
『土方氏!』
「…?」
立ち止まって振り返れば、俯いた妃咲が言葉を続けた。
『君は優しいナリ。いつでも拙者のことを考えてくれて、信じてくれて、想ってくれて…』
「…妃咲?」
『だけど拙者も同じくらい…いや、それ以上に君のことを想っているでござる。無理はしないでほしいのだ』
「…」
『いつも拙者の為に無茶ばかりして、傷付いて、それでも私のことを大切にしてくれて…』
「…妃咲」
今、妃咲が自分のことを『私』って……もしかして…
『いつもありがとう……トシくん。タバコの匂いも、不器用なところも、意地っ張りなところも全部大好き!』
そう言ってパッと顔をあげた妃咲は、いつもの優しい笑顔でほんのり頬を赤らめていた。
俺は妃咲に駆け寄り、夢中で抱き締めた。少し湿った妃咲の髪が俺の服を濡らしたが、そんなのどうでもいい。妃咲の存在を確かめるように、腕により力を込めた。
「妃咲、妃咲…よかった……!」
『トシくん、心配かけてゴメンね。ありがとう、信じてくれて』
「ばかやろっ、当然だ…!」
『…トシくん、泣いてる?』
そう言って妃咲は俺の腕の中から抜け出そうと身を捩らせたので、俺はそれを阻止した。そして、小さな声でボソボソと呟いた。
「見ねェでくれ…今、すげーカッコ悪いから。俺」
『…ふふ、トシくんはいつでもカッコいいよ』
そう言って俺の胸に擦り寄ってくる妃咲がどうしようもなく可愛くて、俺は今、世界一の幸福者だと感じた。
連載第十六話
すげーしょうもない話!
そして自分のネーミングセンスのなさに絶望ww
2008.9.10 春日愛紗