受け継がれる想い
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『わあ…!』
トシくんに引っ張られて着いたのは、今朝行った慰霊碑の更に奥にあった小高い丘の上。そこからは江戸が見渡せて、屯所の場所もすぐにわかった。
『トシくん、ここ…』
「もっとちゃんとしたの、作ってやりたかったんだけどよ…」
時間がなくて…と言うトシくんの指差す方を見れば、高さが私の腰の辺りまである大きな石が立てられていた。
その下の方の両脇には小さな花瓶、真ん中に器のようなものが置いてあり、中には粒子の細かい砂のようなものが入っていた。これって、もしかして…
『私の、お父さんとお母さんの…お墓?』
「俺ァ妃咲の両親に会ったことねェけどよ、妃咲は俺の一番大事な人だし…お前が寂しくないようにと思っ……」
恥ずかしそうにボソボソしゃべるトシくんの言葉を遮り、背中に思い切り抱きついた。トシくんはすごく驚いていたけど、私は構わずお礼を言った。
『あり、がとっ……』
「妃咲、何で泣いて…」
『嬉しい…!』
「…そか、よかった。もしかしたら余計な世話だったかもしんねーと思ってた」
トシくんは、彼の優しさに触れて泣いてしまった私の頭をゆっくりと撫でてくれた。そしてトルコキキョウとお線香を差し出し、私にくれた。
「あ、しまった。ライター…これしかねェ」
そう言って袂から取り出したのはトシくんがいつもタバコを吸うときに使うマヨライター。トシくんらしいな…と思ってフッと笑い、『それ、貸して』と言った。
「え、でも…」
戸惑っているトシくんからマヨライターを取って、お線香に火をつけて立て、手を合わせて言った。
『お父さん、お母さん。この人…トシくんが私の一番大切な人です。いつも私を支えてくれて、いつも私を想ってくれている素敵な人です』
言い終わってから顔をあげれば、トシくんは赤くなった顔を隠すように腕で覆って立っていた。ありがとう、とライターを返すと「言い逃げなんてさせねェ」と言って残りのお線香を取り出し、火をつけて私が立てたのの隣にそれを立てた。
「日向さん、妃咲さんとお付き合いさせて頂いている土方です。彼女の笑顔にはいつも助けられていて、これからも僕がその笑顔を守っていくために全力を尽くしたいと思っています」
きれいに手を合わせてそう言ったトシくんは、顔をあげてニヤリと笑った。
その顔もまたカッコよくて、私はどきんとしてしまった。
『僕って何~!?』
「うるせー!いいだろ別に」
『さっきのトシくん、微妙に緊張してなかった?』
「バカ、惚れた女の両親に挨拶するなんて初めてだ。緊張くらいするだろ」
『そんなもん?』
「ああ……たぶん」
『何それ!』
そんな会話をして笑いながら帰路についた私たちの手は、屯所に着くまでずっと繋がれたままだった。
「あとな、お前に言いたいことがある」
『ん?』
トシくんは屯所の門をギィと押し、ゆっくりと開いた。
「お前は、帰る場所がねェと言ったがな…」
ギギ…と音を立て、開かれた門からは夕陽が差し込み、正面に何かあるのはわかったが、逆光のためそれが何かまではわからなかった。
「ここが、お前の帰る場所だ」
一歩前に出て陽の光を門で遮り、目を開けるとそこには隊士のみんなが笑って立っていた。
『みんな、何で…』
「ここにいるみんな、妃咲ちゃんの仲間だ!」
「仲間がピンチの時にゃ、他の全員で助ける。それが暗黙の局中法度ですぜィ」
『だって、帰省中じゃ…』
「まだわかんねーのか?」
そう言ってトシくんは、後ろから私の両肩を掴んだ。
「全員、墓参りやらを済まして、妃咲の帰りを待ってたんだぞ」
その時やっと全てが理解出来た。そっか、みんな私を心配して帰ってきてくれたんだ。私があんなこと言ったから、私がひとりじゃないことを教えるために…私には、帰る場所があることを教えるために……。
『みんな…ありがとう……!』
本日二度目の涙を流した私は、みんなの優しい笑顔に迎えられて屯所に入った。
連載第十五話。
何がしたいのかさっぱりわからん。
しかもお盆終わっちゃってるorz
2008.8.18 春日愛紗