受け継がれる想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トシくんと別れた後、私はある場所に向かっていた。
目当ての物を購入し、それを抱えて屯所に戻った。そして勲さんたち3人組を玄関前に集めた。
「えっと、妃咲ちゃん…?」
『勲さん…これ!』
何のために集められたか理解できていない彼らを無視して、私は勲さんに買ってきたものを押し付けた。
「花…ですかィ?」
『トシくんにはこれ!』
と、差し出したのは先程まで仏壇に供えられていたあの花。『ごめんなさい』と謝って返してもらい、代わりに小さな菊の花を差しておいた。
「これ、トルコキキョウ…」
そう、私が買ってきたのはお墓に供える用の花。その目的はもちろんミツバさんのためだ。
『やっぱり…お盆だし、さ。ミツバさんもきっとみんなに会いたがってるよ!』
「妃咲…」
『大丈夫ですよ!勲さんたちが留守の間、私がしっかり江戸の平和を守りますから!』
「そんなら、大江戸警察に任せて妃咲ちゃんだって里帰りを…」
「バカ!近藤さん、妃咲は…」
トシくんにたしなめられた勲さんは、ハッとした顔をした。私は言葉が見当たらなくて、苦笑いで返すことしかできなかった。
『私には、帰る場所がありませんから…』
私はトリップして来た身。こっちの世界には昔からの知り合いはおろか、両親のお墓さえない。帰る家も、場所もないのだ。
しかしそんなことで空気を暗くなんてしてられない!私は笑顔を作って勲さんたちの背中を押した。
『私の分も、キチンと拝んできてくださいね』
大丈夫、きっとうまく笑えてたはず。そりゃ私だけで屯所を守るのには不安があったけど…せっかく帰省するんだし、やっぱり心置きなく里帰りしてほしい。だから私は、精一杯笑って見せた。