受け継がれる想い
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『あれ?』
帰省組が大方出払った後、いつもと違ってシーンとした屯所の中をブラブラ歩いていたら、隊服を着た総悟と出会った。てっきり総悟も帰省組だと思っていた私は、少し驚いて総悟に話しかけた。
『総悟は帰らないの?』
「帰りやせんぜ、墓参りなんていつでも行けやすし」
そう言って微笑む総悟だったけど、私にはやっぱり帰りたいんじゃないかと思えた。いくらいつでも行けると言えど、やっぱりお盆のお墓参りは特別だし。
ふーん。という言葉だけを返した後、総悟に「一緒に近所の定食屋に行きやせんか」と誘われた。食堂で働いている女中さんたちも今はお盆休みなので、私のように江戸に残る者は自分で食事をどうにかしなければならない。ちょうどお腹も空いてきた頃なので、お誘いに乗ることにした。
久しぶりの外食は何だかいつもと違った美味しさがあって新鮮で、時間の許す限りゆっくりと堪能した。その時総悟に聞いたのだが、どうやら居残り組は勲さん、トシくん、総悟と私のみらしい。
「お、妃咲ちゃん!総悟とメシ行ってたのか」
『はい!』
「…2人でか?」
「そうですぜ、他の隊士はみんな帰省済みでさァ」
屯所に戻って来た時、丁度トシくんと勲さんに出会った。トシくんはとても不機嫌で、何でだろうと理由を一生懸命考えた。総悟をさっきからずっと睨んでいる所からすると、総悟と一緒にご飯に行ったのに対して怒っているのかもしれない。よく考えてみれば私だって、トシくんが他の女の子とご飯に行くのなんて嫌だ。けど、やっぱりトシくんがヤキモチを妬いてくれたことは嬉しい…!いかんいかんと思いつつも、勲さんたちと別れてトシくんと2人で歩いていたとき、腕にギュッと抱きついてみた。するとトシくんは少し頬を赤くして「何だよ…」と言ってきた。
『何でもないよ、ごめんね?』
「べ、別に怒ってなんかねーけどよ…」
『そうなの?ヤキモチ妬いてくれたかと思ったのに…違うんだ』
「違くはない!…え?あ、いやそーじゃなく…いや、そーじゃなくはないんだけど…アレ?」
『ふふっ、トシくん!』
「何…」
『だいすき!』
普段、たくさん人がいる屯所ではなかなか言えないけど、今日くらいは言ってもいいかな…なんて思って、ちょっと素直になってみると、トシくんはさっきよりももっと顔を赤くして目を反らした。
「お、俺も…だ」