故き恋と現の愛
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『快適ですね~』
「だな~…文明の利器、最高。神様ありがとう」
『私もお礼言っときます……神様ありがとう』
納涼水浴び大会から数日が経ち、ようやく復旧した空調の機械から冷風が吹き込み、屯所には平和な日々が戻ってきた。
そして只今、私と勲さんはクーラーのきいた部屋でのんびりとお茶を飲んでいる。トシくんや総悟は見廻りに出掛けてしまっており、私たちは2人で他愛ない話を続けていた。
『へぇ、じゃあ3人は故郷が一緒なんですね』
「まぁな!トシ、昔は髪長かったんだぜ」
『わ、見たかったな~…!』
今からは想像もつかないな、長髪のトシくん。きっと今と一緒でカッコいいんだろうな~…。
「お、そうだ。アルバムに写真があったはず…」
『本当ですかー!やった!』
そう言ってゴソゴソ押し入れを漁る勲さんを横目に、私は昔のトシくんや総悟を想像していた。あ!もちろん昔の勲さんも!
きっと総悟は可愛かったんだろうなぁ……話からすると8年から5年くらい前の写真らしいし、勲さんやトシくんはそんなに変わってないのかもしれない。どーなんだろう?
そんなことを思いながらボーッとしていたら、「あったァァァ!」と叫びながら勲さんが押し入れから顔を出した。
「コレコレ、俺たちがまだ武州にいたころの写真!」
『わぉ、見せてください~!』
結構厚みのあるアルバムを受け取って膝の上に乗せ、表紙を開くとそこには若い頃のみんながいた。
『わ、トシくんやっぱ今より幼い!勲さんも若い!』
「わっはっは、そりゃそーだ!」
『総悟ちっちゃーい!生意気そうな顔してる~』
みんなの過去の姿を見て自然と笑顔になっていた私だったが、写真の中にある女性を見付けて何だか嫌な予感がして、ページを捲っていた手の動きが止まった。
『………』
「ん、どーした妃咲ちゃ……あぁ、それは」
よくわからないけど、この人のことは聞きたくない。なぜだか心がそう訴えているような気がした。今ならまだ間に合う…勲さんから次の言葉が発せられる前に、耳を塞いでしまえば……
「ミツバ殿だよ、総悟の姉さん」
その言葉を聞いた瞬間、まるで金縛りにあったように動けなくなった。何で?理由は分からないけれど、私の額からは嫌な汗が一筋流れた。
13*故き恋と現の愛