涼を求めて三千里
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「妃咲、」
屯所でだらけきっていた隊士たちを起こして、濡れてもいい格好に着替えて中庭に集合と伝えた。
私は隊服以外だと着物とセーラー服くらいしかなかったので、いつも寝巻きに使っている薄桃色の浴衣を着て中庭に行こうと思っていた。着替える直前に襖の向こうからトシくんに声をかけられたので、『どうぞ』と返事をした。
「…お前、それ着るつもりか?」
『コレ?そうだよ?』
私の足元に置いてあった浴衣を指差したトシくんは、渋い顔をして黒っぽい何かを差し出した。
『何これ?』
受け取ったものを広げてみると、ずっと前に借りたのと同じ黒い浴衣だった。
どういう理由でこれを渡されたのかが理解出来なくて、説明してもらおうとトシくんの顔を見上げると、なぜか真っ赤になって手の甲で口元を隠していた。
「あー…」
いつもと違ってハッキリしないトシくんに疑問を抱きつつもジッと次の言葉を待っていたら、トシくんの口から発せられた言葉は意外なものだった。
「…その……そんな薄い色の浴衣着て、水なんかかけられたら………透けるだ、ろ?」
『え、何……あぁ!』
そういえばそうだ、全然考えてなかったけど…これだと下着が透ける、絶対。
そこでようやく渡された浴衣の意味を理解した私は、トシくんの心遣いがとても嬉しすぎてちょっと泣きそうになった。
『…ありがとう!嬉しい』
「そう、か……ならよかった」
そう言って去っていったトシくんを見送った後、急いで黒い浴衣に着替えて袖をまくり、裾も太股辺りまで上げて留め、中庭に走った。
水道に繋がったホースを持った私は全員にかかるように水を撒いて、勲さんやトシくんはバケツに水を溜めて皆にかけた。総悟はというと、どこかから巨大な水鉄砲を持ってきて、いつものようにトシくんを狙っていた。みんなの笑顔がとても眩しくて、こうやって全員で笑えるならさっきまで大嫌いだった夏だって、悪くないかもなぁ…と思った!
連載第十二話。
書いてから思った、真選組だらけすぎだ(笑)
2008.7.31 春日愛紗