天の川に願いを込めて
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隊士全員に短冊を配布した後、俺は何を願おうか考えていた。笹にくくりつけるわけだし、誰かに見られても恥ずかしくないような内容にしねェと。
「難しい…」
願い事…何がある?##NAME1##とずっと一緒にいたい、なんて書いたら笹ごと総悟に爆破されかねねェ。そんなことになったら、一生懸命準備してた妃咲が落胆するのは目に見えている!
妃咲関係じゃねェとすると、何だ。何かあるか?……もうこれ以上、マヨネーズが値上がりしませんように…って主婦かァァァ!!!!
「…そうだ」
他の隊士の願い事を参考にしよう!そうだ、似たようなの書いときゃいいだろ。
そう思った俺は、笹が飾ってある中庭に足を運んだ。
中庭には嬉しそうに短冊を飾る隊士が何人かいたが、自分の短冊を結びつけると満足したように帰っていった。やっぱこういうイベント的なものがあった方がいいのか……確かに最近やたらと出動してばっかで、なかなか心休まる暇がなかった気がする。今回の七夕は、いい機会だったのかもしれねェな。
「お、この字は近藤さんだな…」
結びつけられた短冊を見てみると、それは近藤さんのものだった。
「何々…お妙さんと結婚できますように……結婚?振り向いてくれますように、とかじゃなくて?」
願い事の後には、デッカイ字で【近藤勲】と書かれていた。相当彦星たちにアピールしたいらしい。
軽くため息をついて目線を移せば、それより少し下にくくりつけられた水色の短冊に書かれたとんでもない願いを見付けた。
「土方さんが俺の手下になりやすように 沖田……コレ名前書かなくても誰が書いたかすぐに分かるわァァ!」
不快な願いに憤慨し、この短冊をちぎってやろうと思ったが、風でヒラと捲れた短冊を見て手を止めた。
「…俺が殺す前に、土方さんが死にませんように、か……可愛いとこもあんじゃねーか、アイツ」
短冊の裏に小さく書かれた言葉に思わず笑みがこぼれた。酷く不器用な言葉だったが、これはきっと総悟の思いやり……だと思いたい。
他の短冊も見てみたが、ミントンが上手になりますように、身長があと5センチ伸びますように、字が綺麗になりますように……と、何とも子供らしい願いばかりで苦笑した。うちの屯所はアホばっかか?
どうでもいいような願い事ばかりのなか、下の方に控えめにくくられた薄桃色の短冊を見付けた。そこには丁寧な字でこう書かれていた。
「みんなとずっと一緒にいられますように 妃咲……はは、アイツらしいな」
いかにも妃咲らしい願いに、何だか気持ちがあったかくなった。
…そうか。コイツらの短冊を見ていて、なぜか俺は微笑ましく思った。その理由が分かった。
誰も着飾った言葉を書いてないからだ。アホな言葉だろうと、どうでもいいような言葉だろうと、誰もが素直な気持ちを書いているからだ。
そうか、俺も特に言葉を飾る必要なんかねェんだ。自分の素直な願いを、この短冊に託そう。
そう思った俺は、足早に自室に戻った。