知りたかった真実
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「妃咲!!!!」
塔の階段を駆け上がり、バンと戸を開けるとそこには不安そうに外を見つめていた妃咲の姿があった。
『トシ、くっ…』
「バカヤロー!!」
何かに怯えた表情をした妃咲を、俺はギュッと抱き締めた。
「何でこんな、勝手なこと…」
『勝手なのは…どっちよ……』
「は?」
腕の中から聞こえる声に手を離せば、俺の胸を軽く押し返した妃咲は俯いたまま話し出した。
『何で、何で来たのよ。誰もこんなこと…頼んでないじゃない……!』
よく見ると妃咲の体は震えているようで、足も着物もボロボロだった。
「オイ妃咲…」
『私が、私がどんな気持ちでここに来たと思ってるのよ!私だって本当は帰りたい…でもそれじゃダメなのよ!!』
そう言って顔をあげた妃咲は、ボロボロと大粒の涙をこぼしていた。
「話して、くれるか…?」
『…っ』
小さくコクリと頷いた妃咲は、ゆっくりと話し出した。
『へ、結婚!?聞いてませんよそんなこと!』
「あり?そうだっけ?」
『そうだっけ?じゃないです!長官、私帰りますよ』
「まぁまぁそう言わずに、話だけでもしてやってくれや。抑生殿、妃咲ちゃんに相当惚れ込んでるからよォ…」
『…まぁ、お話くらいならいいですけど……』
「抑生殿、妃咲ちゃん連れて来たぜ」
「妃咲殿…ずっと、お会いしたかった……」
『は、はぁ…』
「んじゃ後は、若い2人で」
『ちょ、ちょっと長官んんん!あ、ホントに帰りやがった長官!!』
「妃咲殿、」
『へ?あ、何でしょう…』
「あなたに恋人がいるのは知っています…けれど、僕はこんなにも美しい方を他に見たことがない。どうか、僕と夫婦に…」
『……ごめんなさい、私には恋人を…トシくんを裏切ることは出来ません…だから、』
「…いいんですか?」
『へ?』
「僕は幕府の重鎮と関わりがある…真選組を潰すことなんて、容易いんですよ?」
『何、をっ…!』
「賢いアナタなら、この意味…お分かりですよね?」
「おやおや、もう抵抗しないんですか?」
『…てるから』
「はい?」
『知ってるから、私は。あの人たちが、自分の命よりも大切にしているものを…知ってるから……』
全部を話した妃咲は、再び涙を流し始めた。そうか、そうだったのか…妃咲は俺たちのためを思って、自分を犠牲にしてまで……。
妃咲の涙をそっと掬ってやり、木刀を担いで戸の方に向き直した。
「いいかァ妃咲、覚えとけ」
『…っ?』
顔だけ妃咲の方に向け、ニヤリと笑って言ってやった。
「確かに俺ァ、自分の命よりも真選組が大切だ。だがなァ…同じくらい、妃咲のことも大切に想ってんだよ……」
真っ赤な顔をした妃咲を置いて、俺は階段を降りた。本当のことを知った俺がするべきことはただひとつ。
あのヤローをぶん殴る!!!!
連載第九話。
無駄に男前なトシくん。
2008.6.22 愛紗