任務を遂行せよ
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「ってアホかァァ!!!」
パリーン!
キメポーズをとったはいいが、かなり恥ずかしくなって持っていた鏡を地面に叩きつけた。山崎から配布された武器(鏡)は粉々に砕け散った。
「何なんだよアレェェ!技の名前じゃねーだろ!!大体何で俺の武器、鏡ィィ!!?」
「俺のなんて匂いのキツい花ですぜィ。やってらんねーや」
『とか言って、ちょっと楽しそうだったじゃない!その上総悟の技名とか完全自己紹介だしね』
「妃咲の武器は?さっきは刀で戦ってたろ」
『まだ見てないよ、切り札にしとこーと思って…』
「つーかニンジャーチェキラ!って何でィ?」
『私の忍者服はチェック柄だからね。ちょっとアレンジしてチェキラ!』
「あーあー副長…」
「ヤメロ!俺がこんな格好してるなんてバレたら恥ずかしいだろ!!」
「えー……じゃあミラーさん」
「それならいい」
「…ミラーさん、鏡粉々じゃないですか。ハイ、予備です」
「準備いいなオイ」
「…あのー、」
俺たちがワイワイ揉めていたら、向こう方の男が恐る恐る俺たちに声をかけた。
「なんだ」
「隠密…ですよね?」
「まァな」
「…引っ捕らえろォォ!!」
「ギャアアアア!!!」
『ちょ、逃げないとォォ!!』
「二手に別れましょう!」
「じゃあ妃咲、一緒に行きやしょう!」
「ふざけんな!妃咲、俺と一緒に行くぞ」
「言ってる場合ですかァァ!!」
戸惑っていた妃咲の手をぐいっと引っ張り、一緒の方向に逃げた。後ろで総悟の奴が「土方死ねェェ」と叫んでいたが…知ったこっちゃねェ。走っている間、俺の心はずっとワクワクしていた。
『……ふ~…トシくん走るの速すぎ!足がもつれちゃうかと思ったじゃない』
「お前、走るの得意だって言ってたろ!」
『そうだけど~…さすがに男子みたいに速くは走れないよっ』
あまり使われていないっぽい埃っぽい倉に隠れたはいいが、妃咲はぶーぶー文句を言いながら膨れている。しかし迫力なんてものはなくて、ただ可愛らしい仕草にしか見えな……ってェェ!!イカンイカン、今はそんなこと考えたらイカンンンン!!
『そういえば、さ』
「…何だ?」
急に大人しくなったかと思うと、妃咲はスッと俺の横に移動して…ってエエエ!!ピッタリくっついてきたんですけどォォ!!!ちょ、待て。今、俺の心臓の音聞こえてるぞ絶対。
『こうして2人でいるの…久しぶりじゃない?』
「そう、だったか…?」
『…そうだよ』
そう言って妃咲はコテンと頭を俺の肩に預けた。何やってんだお前ェェ!!何でそうやって俺の理性を揺るがすことばっかりしてくるんだァァ!!!
バックンバックンうるさく響く心音に気付かないフリをしてチラリと妃咲を見れば、その視線に気付いたのか控えめに上目使いで俺を見つめてきた。やめてくれェェ…!!
その時、俺の脳内には3つの選択肢が浮かび上がった。
①本能に身を任せる
②脆い理性に賭ける
③その他
①…はダメだダメだ。そんなことしたら妃咲に嫌われること請け合いだ。
じゃあ②か?うん、これが一番いいな、けど賭けに負けちまったら最悪だ。
③…って何だその他って!!具体的な行動パターンを示せェェ!!!
心の中で自問自答を繰り返していたら、外がだいぶ騒がしくなってきた。バレるのも時間の問題のようだ…。妃咲もその空気を察知したらしく、背中に背負っている刀に手を掛けた。
微妙に開けた倉の戸の隙間から外をチェックしたら、かなり大勢の敵がいた。これはもう、2人とも助かるのは無理そうだ…。
「いいか妃咲、俺が敵を引き付けるからその間にお前は逃げろ」
『ええっ、嫌だよそんなの!』
「バカ言うな、大義を見失うんじゃねェ……妃咲まで捕まったら、誰が近藤さんを助けるんだ?」
倉の戸に手を掛けて、ギギィ…と重々しい音を立てて開いた。「倉に隠密が!」なんて叫んでやがる奴らを一瞥し、妃咲の方に振り返って一言声をかけた。
「頼んだぞ、妃咲」