女達の仁義なき戦い
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次の日の朝、零番隊で市中見廻りに出掛けると何だか複数の視線を感じた。それには駿ちゃんとまーくんの2人も気付いたようで、ソワソワしながら私に話しかけた。
「た、隊長。何か視線が…」
「…俺も思ってました。何なんですかね」
『ゴメンね、多分私のせいだよ』
「どういうことっスか?」
『恋敵は羨ましく憎く見えるものなのよ』
「え、全く話が見えないんですが…」
イマイチ納得していない様子の2人に『気にしたら負けよ』と声をかけて見廻りを続行した。気のせいか、建物の影から舌打ちの音が聞こえた気がした。
その後も私が隊服を着ている間は何の動きも見せなかったが(仕事の邪魔したら公務執行妨害だもんね)、オフの日に外を歩いていると、雨なんか全然降ってないのに目の前に大きな水溜まりが出来ていて通れなくなっていたり、ダイレクトに《別れろ!》と書かれた横断幕が掲げられていた。私は大して気にしてはいなかったんだけど、一緒に歩いているときにたまたま神楽ちゃんがその事に気付き、またタイミングよく(悪く?)出会ってしまったトシくんと総悟に食って掛かった。
「おう税金泥棒、お前らも落ちるところまで落ちたアルナ」
「何がだクソチャイナ」
「ドSも含めて…特にそこのマヨラー!お前、妃咲姉が選んだ男だからと黙ってたけど…ちゃんと妃咲姉のこと守れヨ!」
『ちょっと神楽ちゃん…!』
「アァ?どーゆーことだチャイナ娘。説明しろ」
「妃咲姉、お前のこと好きな女に嫌がらせされてるヨ!気付かなかったアルか?!」
「…本当か、妃咲」
『えっと…』
本当はトシくんに「嫌がらせされたらすぐ俺に言え」って言われてた。でも告げ口するみたいで嫌だったし、何より恋する女の子の気持ちはすごくよくわかる。大好きな人には嫌われたくないけど、その人と仲良くしてる女の子は羨ましくて、それを見てるのは辛くて…。だから私の周りの人がとばっちりを受けるまでは黙っておこうと思っていたのだ。まさかこんな形でバレるとは。
真剣な眼差しでジッとトシくんに見つめられ、逃げられないことを悟った私は観念して肯定した。
『そう、だよ…』
「何で早く言わねェんだよ…!俺はそんなに頼りないか?」
『違っ!そうじゃなくて、トシくんに心配かけたくなくて…』
「妃咲に黙ってられる方が辛ェよ、バカ!」
『うっ!』
トシくんに軽くデコピンをされ、その顔を見上げると「もっと俺を頼ってくれ」という言葉と共に頭をくしゃっと撫でられた。
そうだった、トシくんはこんな人だ。どんな小さなことでも面倒くさいことでも、いつも私の力になろうとしてくれる。いつでも私の味方でいてくれる。ちょっぴり出た涙に気付かないふりをして、改めて感じた幸せに自然と笑みが零れた。
トシくんと総悟が見廻りを再開するためパトカーに乗って去るのを見送った後、そろそろ日も沈みかけてきたので神楽ちゃんと別れ、屯所への帰路についた。
『…わあっ!』
大通りから小道に入ろうと曲がりかけた瞬間、塀に立て掛けてあった木材が倒れてきた。ぶつかる直前に気付いた私は咄嗟に避けたんだけど、避けきれずに頬に小さな擦り傷が出来て血が滲んだ。そしてそのとき違う方向に倒れた木材が塀に当たり、その大きな破片が女の人に向かって一直線に飛んだ。
「きゃあっ…!」
『…やっ!』
それを見た私は得意の飛び蹴りを繰り出して破片を弾き飛ばし、何とか女性への直撃を避けた。ざわざわと野次馬が集まる中、私が助けた女の人はへたりと座り込んで顔をうつ向けていた。怖くて震えているのかと思ったら、その着物には見覚えがあった。
『あなた…もしかして、』
「ご、ごめんなさい…私っ…」
その女性は土方組のリーダーで、数日前私に宣戦布告をしてきた人だった。
「あ、あなたに怪我させるつもりはなくて!ちょっと驚かそうと……」
『木材が、ちゃんと固定されてなかったんですよ』
「…え?」
『だから偶然倒れてきた。ね?』
そう言って笑いかけ手を差し伸べれば、彼女は泣きながらその手を取った。着物についた砂ぼこりを払って家まで送ってあげると、恥ずかしそうにお礼を言ってくれた。何だか嬉しくなって鼻歌を歌いながら屯所に帰ると、先に戻っていたトシくんに頬の傷を発見され「無茶するな!」とまた叱られてしまった。でもとても優しく手当てしてくれて、トシくんの指が触れる度にその箇所に熱が集まるのを感じた。やばい、幸せすぎる!
「何でェこりゃ…」
次の日、屯所の前に集まった土方組のメンバーはデカデカと《日向組》と書かれた横断幕を掲げ、同じように書かれたハチマキを額に巻いて整列していた。
『これは一体…』
「私たち、あなたのファンクラブになりたいんです!」
「土方さんの応援も続けるけど、あくまで【妃咲さんの彼氏さん】という立場で…」
「今までありがとうございました土方さん!」
「何がだ!」
「頑張ってください、妃咲さん!」
『あ、ど、どうも…!』
トシくんファンクラブ事件はよくわからない方向で解決した。まぁアレだよね、平和が一番!でも私は絶対誰にも、トシくんのことが好きな気持ちは負けません!
連載第二十八話。
何だこの展開/(^o^)\
2009.8.13 春日愛紗
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