お出掛けいたしましょう
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『そういえばさー!』
久々に仕事のない午後、俺は妃咲と一緒に出掛けている。これは俗に言うデートというものになるんだろうか?もう十分いい歳な癖に、妙に気恥ずかしくなって照れてしまう。妃咲が楽しそうにはしゃいでいて、その小さな手を俺が握ってる。ああダメだ、この状態だけで緊張する。手に汗をかきながら(妃咲も手汗をかいているらしい)しばらく他愛ない話をしながら歩いていると、突然妃咲が何かを思い出したかのように声を上げた。
『付き合い始めてから、こうやって2人で…見廻り以外で出掛けるの初めてじゃない?』
「…そういえば、そうかもな」
『やったぁ、初デート記念日!』
そう言ってニッコリ笑う妃咲は本当に可愛かった。あーやっぱりいいわ。すげー癒される!
機嫌が最高に良くなった妃咲は手を繋いでるだけでも十分近かったのに、更に半歩近付いて歩いた。そのお陰で俺の心拍数はとんでもないことになっていたが、それでも絶対離れたくはなかった。
『あ、アイス食べようよ!』
「そうだな、行くか」
繁華街に着いて最初は呉服屋で妃咲の着物を見たり、鍛冶屋で刀や鍔を見ていた。その後入ったショッピングモールにあったアイス屋を見て目を輝かした妃咲は、俺の手を引っ張って店まで急いだ。
『何味にする?あ、ちゃんとマヨネーズも持ってきてるよ!』
「そーか!偉いぞ妃咲。じゃあ俺は…バニラにする」
『じゃあ私チョコレート!』
店員からアイスを受け取り、妃咲は嬉しそうに近くのベンチに座った。俺もその隣に腰掛け、2人でマヨネーズをたっぷりかけたアイスを食べた。
『おいしい!』
「そーか、よかったな」
『…そうだ』
満足そうに笑っていた妃咲は、途中でスプーンを持った手を止め、真剣な表情で固まっていた。何事かと心配して「妃咲?」と声をかけたら、ぎこちない動きでアイス(マヨ付き)をすくい、俺の方を向いて座り直した。顔は真剣な表情のままだったが、頬がほんのり紅潮していた。どうしたんだ?
『…トシくん』
「ん?」
『あ、あーん…』
…え?今何て言った?俺の耳が正常なら『あーん』って聞こえたんだけど……ええええそういうこと!?いやいや嬉しいけども!彼女にあーんってしてもらうとか、男の夢だけども!でもこんな公衆の面前で、しかも鬼の副長と恐れられる俺があーんってするのか?無理だろぉぉ!…でもきっと、妃咲だって勇気を振り絞って言ってくれたはずだ(手ェ震えてるし)。その気持ちを無下にすることなんて、俺には絶対に出来ねェ…!!
「い、いただきます…」
『…どうぞ』
「あー…」
ちょっと控えめに口を開けると、妃咲はゆっくりスプーンを俺の口に運んだ。間接キスな上に妃咲に食べさせてもらった俺は、アイスの味なんて全くわからなかったが幸せだけは感じた。間違いない、俺は世界一の幸せ者だ!
「ほら、妃咲も口開けろ」
『えっ、何で!』
「自分だけやって俺にはさせねェなんてズリーだろ?今度は俺が食わしてやる」
『いいいいいよ!だってこーゆーのは普通彼女がするものであって…』
顔を更に真っ赤にして拒否した妃咲だったが逃がしはしねェ、俺だってやらせてもらう。
「お、俺だって妃咲に食わしてやりてェんだよ!」
『うっ…』
一瞬言葉につまった妃咲は、観念したように目を閉じて口を開けた。やばい、ものっそい可愛い…!
悶えそうになるのを必死に堪えてアイスを食わしてやれば、妃咲ははにかんだように笑って『おいしいね』なんて言っていた。もうアレだ、これ以上の幸せなんてこの世に存在しないと思う。