お出掛けいたしましょう
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私の部屋は服でぐっちゃぐちゃになっていた。せっかく出掛けるんだし、ちょっとでも可愛い格好を!なんて考えていたらなかなか選べなくて、気がついたらこの状態。トシくんを待たせてるんだし早くしないと!と焦る心とは裏腹に、目移りしてしまって未だに決まらない。どうしよう…!
チラッと時計に目をやれば、もう少しで午後3時になるところだった。いけない!ただでさえ少ないトシくんのオフの時間をもらってるのに、無駄に過ごしたらバチが当たるわ!散々悩んだ挙げ句、一番のお気に入りである、以前トシくんに買ってもらった深紅の着物に決めた。大事なことがある日はいつもこれ着てるなぁ、私…。
急いで着替えて髪を結い直し、着物が着崩れないように気を遣いながら玄関まで小走りで行くと、トシくんはもう着流しに着替えてそこにいた。
『ま、待たせてゴメンね…』
「待ってねーよ、今来たとこだ」
『…嘘』
「は?」
『本当は待ってたんでしょ。だって私、着替えるのにすごい時間かかったもん』
待たせてしまって申し訳ない上に、トシくんに気を遣わせてしまったことが情けなくて俯いた。あ、ダメだ。せっかく出掛けるのに暗い顔してちゃ…!
ぶんぶんと頭を振って重苦しい気持ちを払おうとしたら、トシくんが口を開いた。
「待ってんのも、楽しーから」
『え…?』
「…もちろん妃咲限定だけどな……行くぞ」
さっきみたいに耳まで赤くしたトシくんはずかずかと玄関を出ていった。トシくんの言葉が嬉しすぎた私は『あ、待って!』と言いながら緩んだ頬を元に戻すのに必死だった。
「あ、」
『え?』
門を出たところで突然立ち止まったトシくんにあわせて私も歩くのをやめた。どうしたんだろう、忘れ物?
「…手、握っても……いいですか?」
『…ふふ。はい、どうぞ』
急に何を言い出すかと思えば「手を握ってもいいか」って。わざわざあらかじめ聞いてくるトシくんがすごく可愛く思えた。こんなこと言ったら、絶対怒られるから言わないけど!すっと右手を差し出せば、トシくんの大きな左手がそれを包んだ。な、何だかものすごくドキドキしてきた!
『…ゴメン、手に汗かいてきた』
「大丈夫だ、俺もだから」
『…ぷっ。私たちおかしいよね!付き合い始めてから結構経つのに、手繋ぐのにも緊張しまくってる』
「はは!確かにな」
そう言って2人で笑いながら、江戸の街に出掛けていった。