ひな祭り大作戦!
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何とか2時間ほど場をもたせ、2人で団子の入った袋を両手に持って屯所へ帰った。近藤さんに団子を渡そうと部屋を訪れたがおらず、『どこに行ったんだろう』と困っている妃咲に、俺は作戦通り声をかけた。
「宴会場じゃねーですか?」
『…宴会場?何で?』
最初こそ疑問を抱いていた妃咲だったが、俺が必死に促すので何となく納得して、宴会場へ向かった。よしよし、作戦通りでさァ…!
宴会場の襖に手をかけ、ゆっくりと開けるとそこには畳張りのいつもの部屋ではなく、真っ赤な緋毛氈が敷かれていた。そして公家の正装に似た格好をした隊士たちが笑っていた。
『なに、これ…?』
「お帰り妃咲ちゃん!」
「今日は桃の節句ですよ!」
「俺たちのお雛様は、妃咲隊長しかいませんぜ!」
「さぁ、これ着てください!」
そう言って妃咲の肩に掛けられたのは、鮮やかな色合いの袿(うちき)。妃咲の着ていた薄桃色の着物によく映えた。その後金色の飾りを頭につけられた妃咲は、本物の雛人形のように美しかった。
『これ…私のために?』
「俺たち全員、妃咲隊長のこと大好きなんです」
「桃の節句は、女の子の幸せを祈る行事ですからね」
「ここにいる全員、妃咲隊長の幸せを願ってるんですよ!」
そう言った隊士たちの指には、何枚もの絆創膏が貼られていた。裁縫なんかしたことねー奴等ばっかなのに、妃咲のためを思って一生懸命衣装を縫ったんだろう。そんな男たちがこんだけ頑張れたのは、やはりこいつらの中の妃咲の存在が大きいからだと思う。妃咲もそんなみんなの想いがわかったのか、涙を溢しながら笑っていた。
「妃咲、似合ってる」
『トシくん…!』
妃咲を囲む隊士たちの奥から、お内裏様の格好をした土方さんが現れた。そう、ひな祭り大作戦とは妃咲がお雛様、土方さんがお内裏様、他の隊士たちも雛人形の格好をして、自分達で雛飾りになってしまおうというものだった。
『本当にみんな、ありがとう!』
土方さんの隣で笑う妃咲を見るのはやっぱ悔しかったが、それでも俺はずっと妃咲のそばにいるだろうと思った。
「沖田隊長の衣装はこれです」
「…何で赤やピンクなんでィ」
「三人官女ですから」
「妃咲隊長と2人っきりで長い時間過ごしたんですから、このくらいのリスクがないと釣り合いませんよ」
「何、ちょ、うわぁぁぁ!」
机に並べられたご馳走(+団子)を食べながら、俺はみんなの視線を一身に受けて正直泣きそうだった。そんな中、妃咲だけは俺をフォロー?してくれた。
『総悟、可愛いよ?』
「…妃咲の方が可愛いに決まってまさァ」
『ふふ、ありがとー!』
「隊長!俺たち左大臣と右大臣です!」
『駿ちゃんにまーくん、よく似合ってる!』
「妃咲ちゃん、俺は?」
『勲さんもカッコいいですよ!』
「てめ、さりげなく妃咲の隣に座んな!お前も来んな!戻れ!」
「いーじゃないですか今日くらい!」
「副長のケチ!」
「ケチだとぉぉ!?お内裏様は俺だぞ!」
「職権濫用だー」
「横暴を許すなー」
「妃咲隊長はみんなのものだー」
ギャーギャーいつものように騒いでいて、主役の妃咲が取り残されてつまんねーんじゃねーかと思ったけど、妃咲もいつものように笑っていたのでよしとする。
数日後。
「ぎゃあ!何この請求書!ちょ、総悟くぅぅん!?」
「…やべ、忘れてた」
連載第二十五話。
みんなで雛人形ごっこ!
2009.3.3 春日愛紗