22.徐々に薄れる記憶
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一昨日近藤さんたちと祭りに行った時くらいから、妃咲の様子が変だ。
行動は普段と変わらねェし、仕事もキチンとこなす。でも…こっちの世界に来たときのことを忘れてやがる。しかしながら俺に彼女がいたことねェって話は覚えてたみたいだ。だからちょっと、いくつか質問してみることにした。この時間ならまだ自室にいるだろう、そう思って##NAME1##の部屋にやって来た。
「妃咲~、いるか?」
『トシくん?どうぞ入って!』
障子を開けると、妃咲は刀の手入れをしていた。どうやら近藤さんに教わったらしく、手順がそっくりだ。その道具を片して『どうしたの?』と妃咲に聞かれたので、意を決して話し出した。
「妃咲、こっちに来たときのことは覚えてねェんだよな?」
『え、うん…』
「んじゃ…そこに掛けてある着物、あれどこで買ったか覚えてるか?」
そう言って俺が指差したのは赤い着物。俺が馴染みの呉服屋で妃咲に買ってやったやつだ。
『…アレ?どこだっけ……でもトシくんに買ってもらったような気がする』
「場所は覚えてねェのか…じゃあその簪は?」
『コレ?コレもトシくんに買ってもらったんじゃない!忘れたの?』
「…いや、俺ァ覚えてるけどよ」
『変なトシくん。どうしたの?』
「あ、いや…「妃咲隊長ー!市中見廻りの時間ですよー!!」
『あ、ゴメン行くね!今から見廻りなんだ』
そう言って、呼んでた柏木に向かって『今行く!』と叫んだ妃咲は、刀を腰に差して立ち上がった。
「あ、妃咲!」
『ん?』
「今日の午後、仕事は?」
『午後?午後は…何もない!』
「んじゃ開けとけ、出掛けるぞ」
『…へ?』
「間抜けな声出してんじゃねーよ…俺ァ今日オフなんでね、付き合ってもらうぜ?」
『う、ううううん!』
めちゃめちゃどもりなから返事をする妃咲が可愛すぎて、にやけそうになった顔を隠すために「さっさと行ってこい」なんて言ってやったら、『御意!』と元気よく返事をして妃咲は行ってしまった。
質問によって得られた情報はほとんどなくて、俺の胸に浮かんでいる漠然とした不安は拭い去れなかった。
22rd.徐々に薄れる記憶