1.前を向いて歩こう
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「妃咲ちゃん、バイバイっ」
「また明日ね」
『うん、バイバイ』
朝から夕方まで8時間にも及ぶ授業が終わり
生徒たちが気だるげに席を立つ、いつもの放課後。
笑顔で別れの挨拶をした後、私はこっそり溜め息をつく。
『やっと帰れる…』
何が楽しくてこんなに勉強しなきゃいけないのか。
と、思い始めてから早2年ちょい。
中学校まではそれなりに勉強も出来たし、部活との両立も、たいして苦じゃなかった。
今は、授業についていくのがやっとの状態。
中3の時の担任の先生とおじいちゃんに進められて受けた、私立銀崎女子高校。
通称、銀ジョ(決して『きんじょ』じゃないから!)
…そもそも、ココを受験したときから、全てが狂ってきたのよ…!
ココの生徒はみんなおかしい。
(無論、外の人から見たら私もおかしいんだろうが)
勉強することが『楽しい』と、誇りを持って言えるんだもの。
私だって嫌いではないよ?
(嗚呼、やっぱり私も所詮銀ジョの一員なのか…)
だけど、好きで勉強してる訳でもない。
将来の夢があるし、国立大に行かないといけないから、頑張れるだけ。
『おと、さあんッ!おかあ、さんッッ!!』
「妃咲っ!やめなさい!!」
『やだ、やだよう!!私を一人にしないで!!!』
「残念ですが…」
『やだやだ!お父さん!お母さん!』
「父、母さん…」
『やだあぁあぁぁ…!』
私のような想いをする子が、一人でも少なくなるように。
私の夢は、医者になることだ。
私の両親は、私が小さい頃病気で死んだ。
二人とも同じ病気で、同じ病院で、ほぼ同じ時間にこの世を去った。
本当に凄い偶然だけど、それが運命だったんだろう。
今思うと、二人が一緒に逝けたのなら、それはそれで良かったのかもしれない。
お互いの苦しむ姿を見ることなく、眠れたんだもんね。
なんーて、大人っぽいこと言っちゃったり。
いやそりゃ本当は寂しいけどさ、子育てなんて全然したことのないおじいちゃんが
男手ひとつで一生懸命育ててくれたし、それなりに幸せだよ。
『…やばっ!』
一人になった教室でずーっとしんみりしてたら、もう空が暗くなり始めていた。
1st.前を向いて歩こう