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『帰らぬ者と残った後悔』

ロウは答えない。

暗い顔をしたまま、俯いたまま、俺を見ない。


「ねぇって、ジーナはどこに__」


黙れ、とでも言う様に、ロウは静かに、スーツの内ポケットから何かを取り出した。

それは、ぱさり、と低い机に投げられた。

それには見覚えがあった。

それだけになっても、それがなんであったのかなんて、わかりたくもないのに脳が理解し伝えてくる。


緩くウェーブのかかった、薄いクリーム色。

それが、風になびく光景を、鮮明に思い出せてしまうのが尚のこと辛かった。


これは、


この髪は、


ジーナのものだ。





「.......すまない。これしか、回収出来なかった...」


深く俯いたまま、そう告げた。

これがここに、こうしてあるというこの事実が、何を指すのかも、もうわかっていた。


それでも、嘘だと言って欲しかった。

お前は、すぐに騙されるなと、彼女は後から遅れて帰ってくるのだと、言って欲しかった。


「私の不注意だ。....目を、離したんだ。一瞬の事だった....アイツならば大丈夫だと、思っていた。」


すまない。ロウがそう呟いた瞬間、俺はその場にへたりと座り込んでしまった。
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