一の陣~第一篇~
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『キング、また強くなったな』
俺はOZからログアウトしてイヤホンをとり、携帯を閉じた。
『世界一、か』
俺だってあと少しで日本代表になれたのにな。
『…』
寝ている先輩を一瞥する。無防備で可愛い寝顔というとても貴重な姿を見れた。そして、左頬にご飯粒が付いていた。取ろうと手を伸ばしてご飯粒を取った瞬間、目的地を知らせる車内のアナウンスが鳴ってしまい、篠原先輩が起きてしまった。
夏「ん…淳樹くん、なんかした?」
『あ、いえ。頬っぺたにご飯粒がついていたんで』
夏「!?」
『どうしました?』
夏「な、何でもないよっ」
俺はこの時気づかなかった。勿体ない精神で無意識に篠原先輩と間接キスをしてしまった事を。
『ところで大おばあさんはおいくつなんですか?』
夏「今度の誕生日で90歳になるの」
上田駅に着いて新幹線から降りた。先輩は軽装だが、俺は全身荷物だらけ。改札を出るとすぐに、“平成21年 上田わっしょい”の文字が目に飛び込んだ。駅の構内に設置された液晶モニターに法被姿で踊る人々の映像が流されている。この地域で催される夏祭りらしい。
『大正9年生まれかぁ。お元気ですね』
夏「最近、少し疲れてるみたいだって親戚の人は言ってたけど…本人はすっかり元気だって。今度、薙刀の大会とか書道大会に審査員をやるとか、市長さんに頼まれて上田わっしょいの相談役みたいなこともやらされそうって、こないだOZのメールで言ってた」
『え?OZを使えるんですか?』
夏「私より詳しいくらいよ」
篠原先輩が携帯を取り出して、俺に手招きをした。なんだろう?そんな深く考えず先輩のそばに近づいた。
『なんだか、すごい人みたいですね』
夏「今の市長さんだけじゃなくて、色んなところに知り合いがいるみたい。戦時中とか戦後に色んな連中の面倒を見てやったものさ、って大おばあちゃんは笑って言ってたけど」
そういって先輩は俺と体を寄せた。
『え?』
すると、腕を伸ばして自分たちに向かって携帯を向けた。電子音とともに上田わっしょいの映像を背にした記念写真の出来上がり。って先輩と写真!?先輩は眩い笑顔とピースサイン。それに比べて俺は間抜け顔。もう一回取り直したい。
『…なんとなくですけど、大おばあさんと篠原先輩って似てそうですね』
そしたら携帯を操作していた先輩の手がピタリと止まった。悪いことを言ってしまったか…?
夏「よく言われる!」
その逆だった。心から嬉しそうだ。
『あの、先輩。取り直ししませんか?』
夏「なんで?」
『いや、そんな間抜けな顔、隣にいる先輩を台無しにしてるから』
夏「そう?私はいいと思うけど…」
『そうですか…先輩が言うならいいですけど。そうだ。先輩、その写メ送っt』
?「夏希ちゃん?」
その声に俺と先輩は振り向く。篠原先輩のアドレスをもらうチャンスを…誰だ邪魔したのは!
?「夏希ちゃん!」
夏「典子おばさん!」
先輩が笑顔を浮かべた。俺の前を通りすぎ、パーマの女性と小さな男の子と女の子に向かって、パーマの女性と両手を合わせる。
典「久しぶり!」
その人は典子さんっていうらしい。一気に人数が増え、5人になった。